現状の電池の性能や、ガソリンスタンド過疎を考えると、EVとのマッチングが最も良いのは軽トラックでしょう。特に、農家さんが母屋から近くの田畑まで行くケースだと、軽トラEVほど最適なモデルはないと言えます。

 例えば、ホンダの商用バンEVである「N-VAN e:」は、約30kWhのバッテリーを積み、245kmの航続距離(WLTCモード)があります。200V-6kWの普通充電に対応していて、約4.5時間で満充電(充電残量警告点灯時から)できます。夜間、使わない間に充電が完了します。

 とはいえ、考えてみてください。それこそ200Vでなく、100Vでも事足りるでしょう。近くの田畑に行くのに、この容量のバッテリーは必要ありません。

 軽トラは、荷台の一部をバッテリー搭載部にすれば、割と簡単にEV仕様にできるはずです。自動車メーカーを取材中、談笑がてら何度か提案したことがあるのですが、返答されるのはきまって、「荷台の広さが軽トラックのアピールポイントなので、バッテリーが荷台を圧迫すると売れなくなる」――。

 確かに、大量の荷物を積めるのが軽トラのメリットです。しかし、これほどガソリンが高くなり、しかも給油所が減っていく今後を考えると、また違ったアピールポイントになり得るのではと思います。

 軽トラを使って作業している農家さんの場合、走行距離そのものが短いので、給油の頻度がそもそも高くなく、2週間に1度くらいなのかもしれません。それでも、給油のためだけに遠くのガソリンスタンドに移動するのは、無駄なエネルギー消費、時間の無駄遣いです。

 農家さんは作業の合間にポットを使ってお茶を飲む機会もあるかと思います。AC-100Vのコンセントを設置しておけば、その場でお湯を沸かしてアツアツのお茶を飲めます。また、農作業でドローンを使う場合、ドローンの充電もできるでしょう。ガソリンスタンドの減少というインフラの変化に、もっと柔軟に対応すること、クルマの存在価値を変えていくことも自動車メーカーに求められる使命ではないでしょうか?

 同様に、近場の買い物や通勤通学のためだけに使われている軽自動車は、EVに置き換わってもいいでしょう。あるいは原付バイクの国内生産が終了しますので、今まで原付を使っていた人が、軽EVへシフトする選択肢もあるでしょう。モビリティは適材適所で使うことが結局、最もコスパ・タイパが良いのです。