「国産米を守れ!」と亀田製菓の不買運動を展開している人たちは100%の善意でやっている。それは素晴らしいことなのだが、そこには消費者視点しかないので、自分たちの行動が、取引先や原料を供給する生産者、そして社会全体にどんな悪影響を及ぼすかまで想像できない。
厳しい言い方をしてしまうと、「ナショナリズムによって視野が狭くなっている」のだ。だから、日本のために良かれと思ってやった企業攻撃が、まわり回って日本の不利益になってしまう、という皮肉な結末を招くのである。
……といろいろ言ってみたものの、再び盛り上がった亀田製菓の不買運動はそう簡単に鎮まることはないだろう。
ネットやSNSを見ていると、低迷する株価チャートや、売り場に積み上がった柿の種の写真をアップして「ざまあwww」「日本人をナメるな」「効いてる、効いてる、インド出身CEOが辞任するまであと少し」などと「正義の世直し運動」に参加している満足感に包まれている方がかなりいらっしゃる。
よく言われることだが、特定の国や民族を攻撃するプロパガンダというのは「楽しさ」がなくてはいけない。戦時中も愛国の映画や歌謡曲がたくさんつくられた。「日本の敵を楽しく叩きのめす」というコンテンツに、日本人は今も昔も目がないのだ。
不買運動は楽しいし、中国を叩きのめしているようで溜飲も下がるだろう。これが「生きがい」という方もいると思うので、そこまで無理には止めはしない。
しかし、ちょっと冷静になって「これって本当に日本のためになっている?」「単に憂さ晴らししてない?」と胸に手を当てて考えてみてはどうだろうか。
(ノンフィクションライター 窪田順生)