日産自動車が大幅な減益に見舞われている。中国の販売不振に加えて、米国の不振が響いた格好だ。なぜ日産は米国で苦戦を強いられているのか。特集『日産 消滅危機』の#16では、米国で好調なホンダの販売戦略と比較しながらその原因に迫る。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)
販売奨励金が利益を圧迫
大幅値引きで何とか販売
日産自動車が昨年11月7日に発表した2024年9月中間決算は、本業のもうけを示す営業利益が前年同期比90.2%減の329億円となった。
大幅減益となった要因は米国事業の不振だ。販売台数の落ち込みを比較すると、米国は2.7%減の44万9000台と、5.4%減の33万9000台となった中国と比べて踏みとどまっているように見える。
だが、日産の大幅減益をもたらしたのは、販売台数の減少ではなく、むしろ、不人気なクルマを売るための販売奨励金(値下げの費用)の増加である。
欧州における販売奨励金が362億円なのに対し、米国での販売奨励金は1004億円に上っているのだ。
24年3月期の通期決算では、販売奨励金の影響額が524億円だったが、今期は半年で前期の2倍もの費用がかさんでいることが分かる。
これまでは半導体不足を背景にクルマ不足が続き、販売奨励金がなくても売れる状況だった。日産の商品力が、トヨタ自動車やホンダと比べて劣っていることが、クルマの供給不足によって覆い隠されていたのだ。
だが、自動車部品の供給網の混乱が解消してクルマの生産が回復すると、実力差が隠せなくなった。
日産は販売台数を維持するため、ディーラーに支払う奨励金を上積みして“何とか”売っている状況なのだ。
日産は「e-POWER」という独自のハイブリッドシステムを持つが、トヨタやホンダの同システムと比べ燃費が劣る。そのため、長距離を運転するドライバーが多い米国ではe-POWER搭載車を販売していない。
ただ、米国の販売不振の要因は、駆動システムの優劣だけではない。次ページでは、販売戦略や車齢などをホンダと比較しながら、日産が米国で失敗した元凶を明らかにする。