一般的に、築15年前後で行われる1回目の大規模修繕工事の後に、大幅な長期修繕計画の見直しを行うケースが多い。この時に初めて、将来的な資金不足に気づくケースが多いが、修繕積立金を値上げしても、必要な資金が貯まるまでには時間がかかってしまうのである。
このような状況に陥る「築30年」を超える前に、自分たちのマンションにはどのような修繕が必要となるのかを洗い出し、現実的な資金計画を立てておくことが求められる。修繕工事の優先順位を適切に設定することで、効率的に修繕を進めることが可能となるためだ。
マンションの避けられない劣化を
最小限にするための方法とは
<課題2>避けられない「劣化」を放置せず、どう遅らせるか
マンションの老朽化は、単なる美観の問題ではなく、資産価値に深刻な影響を及ぼす。特に、外壁のひび割れやタイルの剥落、鉄部の錆などを放置すると、建物の安全性に問題が生じ、将来的に大がかりな修繕が必要となる。しかし、現実には、必要な修繕が実施されず、建物の劣化が放置されているマンションは少なからず存在する。
分譲マンションの多くは、コンクリート躯体が塗装やタイルなどの外装材で保護されている。しかし、これらの外装材においても、経年劣化は避けられない。そのまま放置することで雨水などが躯体内部に浸入し、コンクリートの中性化を進行させてしまう。
中性化とは、本来アルカリ性であるコンクリートが、雨水や大気中の二酸化炭素などの影響により酸性化していく現象である。中性化が進行すると、コンクリート内部にある「鉄筋」が錆びる要因となり、建物全体を守る機能が「劣化」していくのである。特に築50年を超えるあたりから、この「中性化」による劣化リスクは高まっていくと言われている。
このような事態を防ぐためには、定期的な点検と計画的な修繕が不可欠である。特に、外壁、屋上防水、シーリングなど、劣化が進行しやすい箇所については、重点的に点検を行うべきだ。また、コンクリートの中性化の進行状況を把握し、必要に応じて中性化防止剤を塗布するなど、予防的な措置を講じることも必要になるだろう。また、修繕履歴を適切に記録・保管し、修繕工事の内容、費用、施工会社などを修繕履歴として、記録しておくことも大切だ。
例えば、1回目の大規模修繕工事を、ある施工会社が、その会社の考え方に基づいて実施したとしよう。しかし、2回目も同じ施工会社が担当するとは限らない。そうなった場合、前回の工事で採用した考え方や、修繕した箇所に関する情報が、確実に次の施工会社に引き継がれるとは限らない。
だからこそ場当たり的な修繕を繰り返すだけでなく、修繕履歴をもとに自分たちのマンションの維持管理状態をしっかりと把握し、「必要なメンテナンスを適切なタイミングで」実施していくスタンスを維持していくことこそ、管理組合に託された役割なのである。