理事会の担い手不足と
駐車場という隠れ財政リスク

<課題3>多様化する居住者と理事会運営への対応は?

 前述の<課題1>で見た「修繕積立金不足」や<同2>で指摘した「老朽化の進行」を含めた問題を適切に対処し、将来にわたってマンションの資産価値を維持していくためには、大規模修繕工事を含めた計画的なマンション管理が不可欠だ。その舵取りを担うのが、管理組合の業務執行機関「理事会」である。

 しかし近年、この理事会が機能不全に陥り、管理運営に深刻な影響を及ぼす場面が見られるようになった。特に問題となるのが、理事の担い手が不足で、年々、役員の選任に苦慮するマンションが増えている。

 投資目的や外国籍の区分所有者が増加していることも、理事会の運営に影響を及ぼしている。実際に住んでいない、あるいは言語や習慣の違う区分所有者が増えることで、理事会としての足並みが揃いにくくなり、何かを決めるにも時間がかかる。さらに、理事会そのものが成立しないケースも出てきていると聞く。適切に理事会が開かれず、管理が行き届いていないマンションは、市場での評価も厳しくなる。「このマンション、大丈夫かな…」そんな不安を抱かせるマンションは、選ばれにくくなっていくだろう。

 だが、現実問題として、マンションに住んでいる人たちを入れ替えることは、そう簡単なことではない。であれば、理事会運営のルールを見直すことも必要だろう。マンション外からでも参加できるオンライン会議システムの導入や、多言語対応の資料作成なども検討し、理事会の運営自体を、時代に合ったより良いルールに変えていくことも有効な方法の一つとなるはずだ。

<課題4>マンションの隠れた財政リスクになりつつある駐車場問題

 マンション管理において、見過ごされがちなのが駐車場の問題だ。特に、築25年を超えるマンションでは、駐車場経営が管理組合の財政を揺るがすリスク要因となっているケースも少なくない。多くのマンションでは分譲時、条例などに基づき、一定台数以上の駐車場設置が義務付けられている。ただ住民の高齢化や、若年層の車離れなど時代の変化に伴い、駐車場の利用率は低下傾向にある。特に地方都市や、公共交通機関が発達していないエリアでは、その傾向は顕著となっている。

 駐車場に空きが出た際、まず管理費収入が減少する。ほとんどのマンションでは、駐車場使用料収入を管理費会計に組み入れているため、収入減は管理費会計の悪化に直結する。さらに、機械式駐車場の場合、空き区画が増えるほど、1台あたりの維持管理コストは割高になり、資金不足を招く要因になりかねない。