上海の中心地にある、立ち退き後の住宅街上海の中心地にある、立ち退き後の住宅街(筆者撮影)

不動産市場低迷の深刻な影響

 なぜここまでの立ち退きが行われているのか。地元住民によると、政府は古い住宅を更地にして新しい建物を建設し、土地の価値を高める計画だった。同時に、雑居地区の住民の居住環境を改善する目的もあった。しかし、不動産市場の低迷により再建計画が停滞し、何年も放置されたままの地区が多く存在している。

 繁華街での変化も顕著だ。南京西路や淮海中路といった、東京でいう銀座や表参道に相当する繁華街エリアでも、たくさんの店舗が閉店した。空き店舗が目立ち、ガラス扉には鎖が掛けられている。2024年の一年間で、日本の伊勢丹や高島屋が撤退したほか、「太平洋百貨」や「梅龍鎮広場」など、かつて上海市民に高い人気を博した地元の老舗百貨店も相次いで閉店した。実店舗の減少に伴い、あたりを歩く人々も激減し、かつての賑わいは失われ、殺伐とした雰囲気が漂っている。

スタバの閉店が続く

 そうした中でも、筆者にとってショックであり、また上海でも大きな話題となったのが、上海の代表的な待ち合わせスポットとして24年間親しまれた「スターバックス新天地店」の閉店である。ちょうど新天地の入り口に位置し、タクシーの乗降場所としても重宝されていたこの店舗は、昨年12月31日に営業を終了した。閉店前の12月中旬からは、多くの市民が別れを惜しんで訪れる姿が見られた。

 上海は世界一のカフェの数を誇る都市だが、近年、コーヒー市場では大きな変化が起きている。中国国内ブランドの瑞幸珈琲(ラッキンコーヒー)や、庫迪珈琲(コッティコーヒー)などの新興チェーンが台頭し、9.9元(約220円)という低価格戦略で激しい競争を繰り広げている。オフィスビルやショッピングモールに入っていたスターバックスは相次いで閉店し、高層オフィスビルの1階のスターバックスにビジネスマンたちが行列を作っていた光景は、もう遠い昔のことのように思える。