秘めた才能を引き出すのに欠かせないのが、アーティストに伴走する「A&R(アーティスト&レパートリー)」ら社員だ。藤倉氏は社長就任後、330人の正社員化に踏み切った。本社のある米国は雇用に対する考え方が日本と異なる。1年かけて説得したと言う。

 当時のA&Rは、契約社員という雇用形態で、ヒットが出ないとその契約を打ち切られた。アーティストの成長を焦らずに支援できる、そんな環境を整える必要があったのだ。正社員化後、社員は長期にわたってアーティストに寄り添い、その魅力を引き出すことができるようになった。

 A&Rはアーティストへ客観的な視点に基づいたアドバイスを送り、インスピレーションを刺激する。アーティストもクリエイティビティー(創造性)を追求する中で、刺激を与えてくれる人を求める。同社には、「この人と仕事がしたい」と指名される社員が増えているという。

 とはいえ藤倉氏は、現状を楽観視しているわけではない。

アーティストが楽曲をオンライン上で発表し、拡散できるようになった今、以前のように「音楽会社がなければ世の中に作品を出せない」わけではない。だからこそ「アーティストから我々の提供するサービスに価値があると認められ、『選ばれる会社』でなくては生き残れない」と危機感を口にする。

その人の熱量に人は魅せられる

 最後に、キャリア形成、自己実現に熱心なMZ世代に向けて、「成功のヒント」を聞いてみた。

 藤倉氏は「集中力・熱量・時間が継続できる時期に、自分の好きなことをとことん追求すること」と話す。

 成功するアーティストに求められるのは、魅力的な生き様や思いであり、創造性に磨きをかけられるだけの熱量だ。日本でも起業を目指す若者が増えてきたが、成功するにはイノベーション(革新性)への熱量、つまり飽くなきチャレンジ精神が必要となってくる。

 自分の可能性を追求し、自分らしく生きるには欠かせない要素なのかもしれない。

(松林 健/5時から作家塾®)