スポンサー離れが加速するも…
CM放映を見合わせる対応は正しいのか

 会見後、スポンサーがフジテレビへのCM出稿を差し止める動きが拡大し、1月20日時点で75社(フジテレビ自身の報道)に上るという。

 報道によれば、CM放映を見合わせる理由として、「疑問を払拭できる内容ではなかった。すぐにCMを止めた方が良いという判断になった」「ガバナンス(企業統治)に欠けた企業に広告は出せない」「最近はSNSですぐ批判されるので、素早く対応しないといけない」「お客様センターに消費者からの問い合わせが多数入っている」といった声が大勢を占める。さらには、「他社が取りやめたのも大きな理由。積極的に取りやめたいわけではないが、『最後の会社』になりたくない」といった本音も聞こえる。

 こうした対応は自社を中心として捉えた危機管理、とりわけレピュテーションリスクマネジメントの対応としては正しいだろう。だが、視点を変えると、それだけでは十分な対応とは言えないと指摘できそうだ。

 スポンサー企業がCM放映を見合わせる理由として、花王は、「花王人権方針」などにのっとり「総合的に判断した」としている。サントリーは、「フジテレビに対してより透明性の高い調査と事実関係の確認を求める」などとしている。その背景にあるのが、「ビジネスと人権」の考え方だ。2023年に旧ジャニーズ事務所の創業者による性加害問題が大きく取り上げられたが、企業の危機管理において、ビジネスと人権が対応すべき重大なテーマとして改めて認識された。

 11年に国連にて全会一致で支持された「ビジネスと人権に関する指導原則」によれば、「企業は、企業活動を通じて人権に悪影響を引き起こすこと、及びこれを助長することを回避し、影響が生じた場合は対処する」(指導原則13)、「企業がその影響を助長していない場合であっても、取引関係によって企業の活動、商品又はサービスと直接関連する人権への悪影響を予防又は軽減するように努める」(指導原則13)といったことが求められる。

 また、22年9月に国から出された「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」では、「企業は、自社が人権への負の影響を引き起こし、又は、助長していることが明らかになった場合、救済を実施し、又は、救済の実施に協力すべきである」と指摘する。

「救済」という考え方は、ビジネスと人権に特有の要請と言える。そこでは、いわば取引先という立場であっても、「負の影響を引き起こし又は助長した他企業に働きかけることにより、その負の影響を防止・軽減するよう努めるべきである」とされる。