お盆休みは、仕事の仕方をじっくり振り返るのに最適なタイミング。普段は忙しすぎて目の前の仕事や目標以外のことはなかなか考えられないという人も、いちど立ち止まり、仕事のやり方を振り返ってみては。そのときに考えたいのが「仕事で関わる相手と信頼関係を築けているかどうか」です。上半期も残りわずかとなるこの時期に、見直してみてはいかがでしょうか。
そこで今回は、2024年6月に発売するとたちまち重版となり、「仕事の本質を学べた」「お客様とのエピソードの数々に5回は泣きました」と反響を呼んでいる『記憶に残る人になる』の著者・福島靖さんと、株式会社Omoitsukiの代表であり『大人の夢の叶え方』の著者でもある幸義一さんに、人から信頼を得るためのコツについて話していただきました。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)
「なぜ?」を引き出す
福島 靖(以下、福島) 先ほど幸さんの名刺を見せていただきましたが、かなり特殊な厚紙でできてるんですよね?
幸 義一(以下、幸) はい、1枚で普通の名刺7枚分くらいの厚さがあります。
福島 すごいですよね。交流会とかあっても何枚も持っていけないですよね。
それでも幸さんがこの名刺を使うのは、最初の印象を大事にしているからですよね。
なぜならこの名刺をもらった人は、確実に「なぜこんな名刺を?」と聞いてしまいます。この「なぜ?」を引き出すことが、相手に覚えてもらうためにいちばん大事なことだと思います。
幸 心理学で「カラーバス効果」とも言われますが、一度気になったものって、その後も気になってしまいますからね。
僕が「コースター」を持ち歩く理由
福島 その人自身に興味があったら、その人の言葉も耳に入ってきますよね。
この状況をつくり出すために、僕もいろいろな工夫をしています。
たとえばカフェで商談するとき。席に着くと、最初におしぼりと氷水が出てきますよね。そしてアイスコーヒーを頼んだら、アイスコーヒーとコースターが出てきます。
でも5分ほど経ってから相手のテーブルを見ると、水浸しになっていることがあります。
なぜかというと、最初に出てくる氷水にコースターがついていなかったからです。するとお客様は、自分のおしぼりでテーブルを拭いて、折り畳んだおしぼりの上にグラスを置くんです。
幸 それではグラスが不安定で、大事な書類を濡らしてしまうかもしれませんよね。
福島 そうなんです。そこで僕は、コースターを持ち歩くことにしました。
ネットショップで100枚500円くらいで買えるやつです。それを、お客様が来る前にさりげなく敷いておくんです。
するとお客様は「このコースター、なんですか?」と聞いてくれます。
もちろん、お客様のテーブルを濡らしたくないという気遣いではありますが、同時に、僕のことに興味を持ってもらうテクニックでもあります。
行動は「在り方」を伝えるためにある
幸 今の話で福島さんがすごいなと思うのは、とっかかりであれば何でもいいわけではなくて、そこに自分の想いが込められていることですよね。
相手に気持ちよくあってほしいとか、大事な商談だから書類を濡れさせないようにとか、気遣いの気持ちでコースターを置いているわけじゃないですか。
「興味を持ってもらう→疑問に思って聞いてもらう→込められた想いを知ってもらう→信頼してもらう」
まさに、ステップが構築されています。
福島 ありがとうございます。
まさにそこが大事でして、ただ目立つ、他の人と違う、というだけでは信頼まではされないと考えています。そこに自分なりの「在り方」が込められていることが大事なんです。
僕がお客様にいちばん伝えたいのは、「僕はこんなことを大事にしています」という在り方なんです。
僕も幸さんも、それぞれの著書の中で、この在り方の重要性をお伝えしています。それこそが、誰もが持てる唯一無二の力です。
でも、初対面でいきなりそんなことを言われたら、嫌ですよね。僕だって、興味ない人からそんな熱い話をされるのは嫌です。
だから、相手から聞きたくなるような仕掛けを用意するんです。
在り方を「ビジュアライズ」しよう
福島 もう一つ、自分の在り方をビジュアライズすることも重要です。
たとえば僕が勤めていたリッツ・カールトンには、「クレドカード」と呼ばれる、ホテルの信条をまとめた小さなカードがありました。
リッツ・カールトンはまったくルールのないホテルなのですが、その代わりにこの「クレド」をとても大事にしていました。
これを参考にして、営業時代の僕も、自分の信条をまとめた「マイクレドカード」を作ってつねに持ち歩いていました。
自分の仕事の仕方などに悩んだときに取り出して、この言葉どおりに僕は生きているだろうかと、考えるんです。
先ほどのコースターは、僕のクレドを目にみえる形で示した行動でもあります。
それだけでなく、そういった僕の振る舞いについて「なぜ?」と聞いてくれたお客様には、このマイクレドカードをお見せするんです。
そうするとお客様は驚きながらも、僕の信条を理解して、信頼してくれるんです。
幸 会社の理念や社訓のカードってもらったりしますよね。でも自分の理念を言葉にして、さらにカードにしてる持ち歩いてる人なんて、きっとほぼいないですよね。
福島 いたらちょっと気持ち悪いかもですね(笑)
でも、だからこそお客様はとても驚きます。『記憶に残る人になる』にも書きましたが、在り方を定めて、それを行動など目に見える形で伝えることで、「自分」が伝わります。
行動に興味を持ってもらい、その先にある生き様とか人柄をお伝えできると、お客様も納得して「この人にお願いしたい」と、信頼してくれるんです。
(本稿は、書籍『記憶に残る人になる』の著者・福島靖さんが行なった対談の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)
「福島靖事務所」代表
経営・営業コンサルティング、事業開発、講演、セミナー等を請け負う。地元の愛媛から18歳で上京。居酒屋店員やバーテンダーなどを経て、24歳でザ・リッツ・カールトン東京に入社。31歳でアメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッドに入社し、法人営業を担当。お客様の記憶に残ることを目指し、1年で紹介数が激増。社内表彰されるほどの成績となった。その後、全営業の上位5%にあたるシニア・セールス・プロフェッショナルになる。株式会社OpenSkyを経て、40歳で独立。『記憶に残る人になる』が初の著書となる。
外資系の製薬会社、医療機器会社を経て2021年3月に起業。全くの未経験からTwitter(現X)をはじめ、約2年でフォロワーが5万人に。集客、販売、採用、PRの全てをTwitterで賄ってきた経験から事業展開。「あなたにお願いしたい」と言われる人(アカウント)になるためのコンサルティング。(株)Omoitsukiを創業し現在4期目。SNSを使って求職者を集めるSNS採用支援をメインサービスとして提供。2023年「大人の夢の叶え方」を商業出版し、著者として講演活動なども行う。