「どうすれば、お客様に覚えてもらえるのか…」
営業パーソンにとって、お客様に「覚えてもらう」ことは死活問題。「前に会いましたっけ?」「すみません、なんの話でしたっけ?」なんて言われてしまうような「その他大勢の営業」では、結果はおろか、信頼関係さえ構築できない。
「お客様の“記憶に残る”ために必要なことがあります」。そう語るのは、『Sales is』を執筆した今井晶也氏と、『記憶に残る人になる』を執筆した福島靖氏だ。お客様の「記憶に残る」ことを心がけたことで圧倒的な成果を出した営業のプロによる対談でわかった「お客様の記憶に残る営業」の真髄に迫る。
「アイスブレイク」は必要ない?
――雑談でお客様の心をつかむコツはありますか?
今井晶也(以下、今井) 営業の現場ではよく「アイスブレイクが大事」と教わりますが、僕はこれを「間違った教育の一つ」だと感じています。
福島靖(以下、福島) それは意外です。どうしてでしょうか。
今井 以前、1,000人の購買者にアンケートを取った結果、「アイスブレイクしてほしい」と答えた人は半数以下だったんです。ほとんどの人が「早く商談に入りたい」と考えていました。
福島 たしかに、ビジネスの現場では効率を求める方が多いですよね。
今井 日本の営業はいわゆる「ルート営業」から広まっていったので、何度も訪問する上で毎回仕事の話から始めても味気ないから雑談から始めるようになったのだと思っています。
話したいことは、お客様から「聞いてもらう」
福島 一方で、良い雑談は顧客との距離を縮める武器にもなりますよね。
今井 そうなんです。そのためには無理に天気やニュースの話をするより、お客様から自然と「雑談したい」となる状況を作るのが理想ですね。
福島 それでいくと、僕はプルデンシャル生命保険にいた伝説の営業、川田修さんを尊敬しています。
今井 お客様の自宅に上がる際、ハンカチを敷いてその上にカバンを置く所作が有名な、あの川田さんですね。
福島 川田さんは著書の中で「アイスブレイクではなくチューニングをする」と書いています。チューニングとは、お客様の関心と、自分が話たいことを一致させることです。商談の冒頭でそれがうまくできると、お客様はこちらの話に興味を持ってくださり、話も自然と盛り上がります。
印象を強くする「事前準備」の工夫
今井 商談前の準備も大切ですよね。
たとえば僕は、お客様に関する資料をあえて紙で用意して、付箋をたくさん貼って商談に持参することがあります。お客様が「ここまで調べてきたんですか?」と、聞きたくて仕方がなくなる状態を作っているんです。
福島 それは素晴らしいですね。相手が自分に関心を持ってくれていると感じると、一気に距離が縮まりますよね。
今井 やりすぎると下品になってしまいますが、「あなたに興味があります」と伝えるための工夫は大事だと考えています。相手から「なぜ?」と質問されたり、感謝されたりすることが、先ほど福島さんがおっしゃった「チューニング」のきっかけになるのかなと思います。