ここからわかるのは、萩本の目利き力はコメディアンのみならずアイドルにも通用するものだったということだ。そして実際、萩本欽一は、アイドルプロデューサーとしても驚異的な手腕を発揮した。
CHA-CHA勝俣州和に
SMAP中居正広も憧れていた
萩本欽一のアイドルプロデュースの歴史は続く。1988年に男性アイドルグループのCHA-CHAがデビュー。やはりヒット曲も生まれ、人気を集めた。
このCHA-CHAも番組発のアイドル。1988年開始の日本テレビ『欽きらリン530!!』から誕生した。勝俣州和をはじめ、5人組の男性グループである。萩本プロデュースとしては、歌って踊れるグループアイドルはこれが初だった。そして番組では全員がコントにも出演。つまり、「歌って踊れてお笑いもできるアイドルグループ」だった。
このフレーズで、SMAPを連想するひともいるだろう。SMAPもまた、歌手でありながらお笑いも本格的にこなすアイドルグループとして芸能史に残る大ブレークを果たした。同じ路線で人気を得たCHA-CHAは、SMAPの先達と言えた。
実は後にSMAPとなる面々も、『欽きらリン530!!』のオーディションを受けていた。先ほど述べた木村拓哉のオーディション時のエピソードは、この番組でのものである。そしてもうひとり、草彅剛も同じオーディションを受けて合格していた。木村と草彅は、CHA-CHAの前身となる「茶々隊」のメンバーでもあった。
草彅は番組にも出演している。だが同じ頃にSMAPが結成され、2人がCHA-CHAに参加することはなかった。またとりわけバラエティでの才能が光った勝俣には、当時中居正広も憧れていたと明かす(『日刊スポーツ』2023年8月12日付記事)。
やさしい人がお笑いをやれば
人の心はきっと温かくなる
そして萩本欽一との縁という点では、香取慎吾も深い。若き香取のバラエティ適性をいち早く見抜いたのは、ほかならぬ萩本だった。