アメリカでベストセラーとなり、多くの絶賛の声を集めた『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』がついに日本に上陸した。著者のブラッド・スタルバーグはマッキンゼー出身で、ウェルビーイング研究の第一人者。この本が指摘するのは、人生を消耗させる「思考の癖」だ。本稿では本書の内容をベースに、「年齢を重ねても成長し続ける人の共通点」を紹介する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

30歳過ぎて「伸びていく人」と「停滞する人」成長を妨げる絶対NG思考Photo: Adobe Stock

「自分らしさ」への執着はやっかいだ

 私たちはしばしば特定のアイデンティティに固執しがちだ。それが仕事であれ、人間関係であれ、一度確立した自分自身の姿に執着することは安心感をもたらす。

 しかし、全米で話題を呼んだ書籍『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』は、1つのアイデンティティに固執すると、かえって問題を引き起こす要因になると指摘する。

われわれが問題を抱えるのは、強いアイデンティティが一つの仕事や人、概念にこだわり、それに執着する時だ。自分の考え方に執着する時も同様だ。

(P.169)

 本書の著者スタルバーグは、10代からアメリカン・フットボールに打ち込んでいた。大学からスカウトされるほど活躍したことで、「アスリート」というアイデンティティに固執し続けていたと、本書の中で回想している。しかし、仕事や家庭で新しい役割を求められた際に、そのアイデンティティへの執着が足枷になったようだ。

変化が激しい時代を生き抜く最重要スキル

 現代の社会では、変化のスピードが加速しており、適応力がより重要視されている。特定のアイデンティティに固執することは、柔軟性を欠いた状態を生み出し、成長の機会を失う原因ともなりかねない。

 常に変わり続けることが重要なのだと本書は訴えている。

一番重要なスキルは、現在の自我の発現が自分の役に立つ時はそれを認識し、役に立たない時はそれを捨てることを学ぶことだ。

(P.165)

 このスキルを身につけることは、私たちが直面するさまざまな困難に対処するための鍵となる。

「過去の自分」にこだわらない

 現在の自分が役に立つ時はそのまま受け入れ、そうでない時は新しい自分を模索する。このプロセスを繰り返すことで、私たちはより強く、耐久性のあるアイデンティティを築き上げることができる。

幸せで健康で高いパフォーマンスを維持している個人や組織は、このパターンを経験する。自分自身を何度も再構築することで、強くて耐久性のあるアイデンティティを維持しているのだ。

(P.27)

 自分自身を再構築することを恐れてはいけない。むしろ、積極的にアイデンティティを再構築することで、私たちはより幸せで、健康的で、高いパフォーマンスを維持することができるのだ。

 例えば、キャリアにおいても、ある時点ではエンジニアとしての自分に誇りを持ち、そのスキルを磨くことが有益かもしれない。しかし、環境の変化に伴って、新しい分野への挑戦が求められる場面はやってくる。会社の方針転換でマネジメント職に異動を命じられるかもしれない。

「自分はエンジニアだ」と強く思い込んでいると、この変化に適応できず、キャリアが停滞してしまうかもしれない。これまでの自分に固執せず、新しいスキルを習得して自分自身を再構築するしかないのだ。

 私たちは誰しも変化を恐れるものだが、変わり続けることで得られるチャンスは計り知れない。「私はこういう人間だから」と決めつけた瞬間、その人の成長は止まる。本当にたくましく生きる人は、「過去の自分」にこだわらない人だ。本書は、そんな「しなやかな強さ」の大切さを教えてくれる。

※本稿は『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』より一部を抜粋・編集して構成しました。