市場の高揚感、堅調な個人消費、
緩慢な生産

 円が約4年ぶりに対米ドルで100円を超える水準に減価した。株価も上がり、市場は高揚感に包まれている。さらに実体経済においても、個人消費が底堅く推移している。それと比べると、製造業や鉱業の生産活動を反映する経済産業省『鉱工業生産』はむしろ緩慢さが目立つ(図表1参照)。

 消費の堅調さに対して、生産はいかにも精彩を欠く。その一因として、消費の軸がモノ(耐久財など)からサービスに移っている可能性が挙げられる。実際、家計の支出対象の内訳を見ると、2011年頃から安定して増えているのは、モノではなくサービスだ(図表2参照)。円安・株高に見る市場の高揚感、あるいはサービスを軸として堅調に増える個人消費に対して、製造業の生産活動の出遅れがが否めない。

 もちろん、こうした状況に対して、円安・株高が始まってまだ半年あまりであり、これから製造業にもプラスの影響が現れるはずだという見方はある。おそらくそうした見方は正しい。

 しかし、北東アジアに目を向けると、日本経済の立ち位置の後退を示唆するいくつかの材料が見えてくる。以下、北東アジアにおける「3つの懸念材料」を見ながら、市場が高揚する中でも健全な危機感を忘れるべきではないことを強調したい。