「難関疲れ」が顕著にうかがえる2月1日 

 図1をご覧になって、どのような感想をお持ちになっただろうか。2月1日午前、男子受験生の3人に1人はA・Bランクの難関・上位校を受験している。ここに挙げた11校中、共学校は渋谷教育学園渋谷(渋渋)と早稲田大学系属早稲田実業学校(早実)のみで、受験者数が唯一1000人を超える開成をはじめとする男子校が受験生の9割を占めている。

 先述したように、21年・22年入試は新型コロナ禍の最中に行われた。受験者数合計を見ていただくとお分かりのように、20年6389人から21年6104人、22年6086人と「安全志向」の痕跡がしっかり刻まれている。23年は反動で200人ほど増加したものの、24年から減少に転じた。25年は6049人と前年より100人弱減らし、20年代で最も少ない。これが「難関疲れ」の実態を示している。

 20年から25年まで一貫してAランクなのは開成麻布渋渋だけである。武蔵駒場東邦はBランクから浮上、早稲田は新校舎効果もあった24年から、早慶の系列校である慶應義塾普通部早稲田大学高等学院早実の3校は25年からAランク入りしている。特に慶應義塾普通部と早実は、四模試でも増加基調が顕著に見られ、25年の話題校でもあった。

 このように、Aランクの入試回が増えたことも「難関疲れ」に拍車を掛けている。難化が進む状況に、「そんなはずではなかった」と受験生は感じていることだろう。

 2月1日午前最大の話題は慶應義塾普通部の大躍進だった。図1で受験者数の変化をご覧いただくと分かるように、24年526人から25年630人へ104人も増加している。次いで増加数が多いのは早実の17人で、普通部の勢いがいかに凄かったのか実感できる。
 
 20年589人から年々受験者数が減少していたが、その点に危機感を抱いた森上和哲(もりかみたかあき)部長(校長に相当)らの取り組みが功を奏した。合格発表を2日に前倒しして、3日の慶應義塾中等部との併願男子受験生を取り込んでいたが、24年から入試での得点状況を初めて公開した点も変化を感じさせた。
 
 早稲田大学系列は早実が増やしたものの早稲田大学高等学院が14人減なので合わせてほぼ前年並みの結果となっている。

 11校のうち、7校はこの入試回だけ募集する学校であり、そこには東京男子御三家が含まれている。開成は別格としても、麻布は737人と20年より2割半も受験生が減っていることが気になるし、新型コロナ禍の22年をピークに減少に転じた武蔵も25年は500人ちょうどと、26年に400人台となる可能性が見えてきた。

 都心部に集まっている東京女子御三家とは異なり、男子の方は開成(荒川区)、麻布(港区)、武蔵(練馬区)といい感じに分散していた。つまり、受験生もエリアごとにある程度すみ分けがなされていたのだが、こうした秩序に大きな影響を与えたのが、相互乗り入れによる直通運転の拡大である。

 13年から始まった東急東横線と東京メトロ副都心線を皮切りに、都営三田線なども加わり、私鉄各路線が複雑に直通するようになった。JR東日本も、湘南新宿ラインと上野東京ラインの開通によって、直通性が飛躍的に高まっている。その結果、生徒の通学範囲が拡大したことで、受験生の志望校選びも大きく変わった。受験者数が増加傾向にある「今風」の学校は、こうした「直通」の恩恵を受けているところが多く見られる。

 図1に倍率は載せていないが、25年(24年)の各校は以下のような状況となった。開成2.66(2.81)倍、麻布2.17(2.26)倍、渋渋2.5(3.23)倍、武蔵2.75(2.99)倍、駒場東邦2.01(2.11)倍、早稲田3.04(2.92)倍、慶應義塾普通部3.33(2.7)倍、早稲田大学高等学院2.95(2.95)倍、早実4.34(3.79)倍、海城2.98(2.98)倍、サレジオ学院2.09(2.12)倍と、早慶の系列校を除けば、軒並みと言っていいほど緩和している。