パブリック・スクールの先生は、生徒たちとどう向き合っているのか。何に重きを置いて生徒を育てようとしているのか。また、理想の教師とはどのような教師なのか。この映画では、そんなパブリック・スクールの根幹となる思想を垣間見ることができます。
パブリック・スクールに
求められるもの
映画の舞台であるウェルトン・アカデミーは、「伝統、名誉、規律、美徳」をモットーとする名門進学校です。親が子どもたちに安定した将来を歩ませるため、つまり、子どもたちが有名大学に進学し、大企業に勤めたり、医者や弁護士になることを期待する親たちのために準備された学校です。
進学校の名に恥じぬよう、そして学校の威信を守るべく、生徒たちはノーラン校長の下で、厳格な規則や規律に縛られた生活をしており、教師も、校長や親の意向にもっぱら沿う形で生徒を教えています。子どもたちにとっては不要な規則や規律があることに教師たちは目もくれません。つまり、この映画は大人が敷いたレールの上で生きることを前提とした生徒たちの日常の姿から始まります。
実際に世界中の富裕層の親たちは、子どもたちの安定した生活や人脈作りを期待して、彼らをイギリスのパブリック・スクール、特にザ・ナイン(編集部注/世界的に有名なパブリック・スクール9校の総称。ウィンチェスター校、イートン校、セントポールズ校、シュルズベリー校、ウェストミンスター校、マーチャント・テイラーズ校、ラグビー校、ハロウ校、チャーターハウス校)に進学させます。今でもリーダーシップや個人の完成が、パブリック・スクールにおいてのみ達成されると考える親もいるのです。
調べてみると、ザ・ナインの卒業生の9割は大学に進学。3~4割がオックスフォード大学やケンブリッジ大学に進学し、1割がアメリカの名門アイビー・リーグに進むために海を渡り、4割は他のイギリスの名門大学に進学しています。
この進学実績はイギリスでもトップクラスで、卒業後には外交官や官僚、裁判官、医師、弁護士に進む若者が相変わらず多いのが現状です。ただ、20世紀後半までは考えられなかったことですが、最近は金融関係や起業家、マスコミを目指す生徒たちも増えてきました。