「ハリー・ポッター」のホグワーツより厳しい?イギリス名門校のリアルな寮生活とは写真はイメージです Photo:PIXTA

世界から入学希望者が殺到するイギリスの名門私立学校、パブリック・スクール。そんな名門校の根幹である「ハウスシステム」について、『ハリー・ポッター』などの映画作品を取り上げながら解説する。本稿は、秦由美子『映画で読み解く イギリスの名門校(パブリック・スクール) エリートを育てる思想・教育・マナー』(光文社新書)の一部を抜粋・編集したものです。

教育の土台を支える
ハウスシステムとは?

 パブリック・スクールでの教育を土台で支えているのがハウスシステムです。

「ハウス」ってことは家?そう思いたくなりますが、そうではありません。家のごとく生徒たちを守る寮のことを「ハウス」と呼んでいるのです。

「学校にいる間は、ハウスが皆さんの家です」。ホグワーツのマクゴナガル先生が語るように、入寮したら生徒は皆家族の一員となります。ハウスにおいてファミリー・スピリットが育つのです。日本では数少ない学生寮のあるラ・サール校も、ファミリー・スピリットを育成し、生徒たちのつながりを大切にしています。

 では、ハウスの名前はどのようにつけられているのでしょうか?ホグワーツでは創立者である4人の魔法使いの名前がつけられていました。「ゴドリック・グリフィンドール」「ヘルガ・ハッフルパフ」「ロウェナ・レイブンクロー」「サラザール・スリザリン」。

 実は実際のパブリック・スクールも同じで、設立当時の校長や有名な卒業生の名前が多くつけられています。

 例えば、ザ・ナイン(編集部注/世界的に有名なパブリック・スクール9校の総称。ウィンチェスター校、イートン校、セントポールズ校、シュルズベリー校、ウェストミンスター校、マーチャント・テイラーズ校、ラグビー校、ハロウ校、チャーターハウス校)の1つであるウェストミンスター校のあるハウスは、ウェストミンスター卒業生でのちに桂冠詩人(王室が最高の詩人に与える称号で、死ぬまで年俸を支給される)となったイギリスの著名な詩人の一人であるジョン・ドライデンの名前をとって、「ドライデン」と呼ばれています。

『クマのプーさん』の著者であるA・A・ミルンの名前をとった「ミルン」というハウスもあります。岩手に建てられたハロウ校の日本分校のハウスの1つは、ハロウ校出身の有名なイギリス首相の「チャーチル」となっています。