耳鳴りになったらどんな治療?
最新の「音響療法」とは

 放置すると危険な耳鳴り。ならないためにできる予防法はあるのだろうか。

「日ごろから意識的に耳をいたわることが大切です。たとえばコンサートに行ってスピーカーの近くの席だったら、近いほうの耳に耳栓を入れる。一定音量で音楽を1時間くらい聴いたら、休みを30分くらい入れるなど、耳に悪い影響を及ぼしそうなものを極力排除するのです。耳はいつも受動的に音を聞いているので、私たちは音によって耳が疲れていることを自覚しにくい傾向があります。だからこそ意識的に耳を休めるのが大切です」

「耳が疲れたから休憩を入れる」のではなく、時間で区切って耳を休ませるようにすることが大切だという。

 また、通勤中に電車や雑踏の中などでイヤホンを使って音楽を聴く場合、騒音の中で聴くためボリュームを上げがちだ。イヤホンではなくヘッドホンを使うほうが周囲の音が入りにくく、音量をある程度下げることができるため耳への負担を少なくすることができる。

 耳鳴りが起こってしまったら、基本的に、原因となる病気の治療と、耳鳴りの苦痛をやわらげるための治療を並行して行う。

「薬に関しては、原因となる病気を治すためには西洋薬や漢方薬、鍼灸などさまざまなものがあります。ただし、耳鳴り自体への特効薬や、耳鳴り止めの薬はありません」

 病気ではない場合、耳鳴りのせいで眠れないから入眠薬を飲む、耳鳴りのせいで気分が優れないから抗うつ薬を飲むというような、耳鳴りが原因で起こる症状に対して薬を処方するしか方法はない。

「今、一番効果的とされているのが、音を音で制する『音響療法』です。小型の補聴器のような機器を装着し、環境音などを使って耳鳴りに慣れさせるのです。これに加えてカウンセリングを行い、耳鳴りへの理解を深めて不安を軽減させます。この2つを合わせてTRT(耳鳴り再訓練法)と呼び、積極的に取り入れる医療機関が増えてきています」

 耳鳴りにならないためには、セルフケアとして耳をいたわる意識を持つとともに、「おかしいな」と思ったら、早めに耳鼻咽喉科で診療を受けることが重要だ。

(監修/オトクリニック東京院長 小川 郁)