1月に開いた経営戦略発表会で、「現在の社名・旭酒造(株)を、6月1日から(株)獺祭に変更する」と発表しました。1990年に獺祭を発売して、2004年には扱う銘柄が獺祭だけになりました。会社名とブランド名を一致させるのは、より強いブランドとして世界の市場を深掘りし、プレミアム化を目指すためです。社名変更は、その意志を示すことにもなります。しかし、ずっと山口県岩国市においている本社を、東京などへ移転させる考えはありません。

 社名変更によって、総務部門などでは煩雑な仕事が増えますが、短期的なデメリットを乗り越えるだけの長期的なメリットは明らかです。理屈上、絶対に正しくて必要なプロセスですから、社内に抵抗はありませんでした。

 経営戦略発表会では、「国内300億円、海外700億円、合わせて1000億円の売り上げを目指す」ことも表明しました。私が社長に就任した1984年には1億円にも満たなかった売り上げが、昨年度は過去最高の195億円に達しました。それに比べても1000億円は非常に大きな数字ですが、「達成できるのか」と社内に動揺が走ったりはしません。

社員にはプレッシャーをかけない
全員が努力できる環境を作るのが大切

 社員にはプレッシャーをかけないからです。プレッシャーを感じるべきなのは、その目標を決めた社長と会長だけです。

 リーダーの仕事は、強い意志を示して目標を追いかけることです。そうした姿を見ていれば、社員はみんな「自分たちも同じようにやればいいんだ」と安心します。社員にはプレッシャーを与えるのでなく、目標に向けて全員がストレートに努力できる環境を作り、成功体験を重ねてもらうこと。これもまた、リーダーにとって大切な仕事です。

 人間の成長とは結局、細かな成功体験の積み重ねでしょう。だから、成功する仕事を常に計画することが大事なんです。社員が成功体験をもてないとしたら、リーダーや事業に無理があるんです。

 無理のある仕事をさせれば上手くいかないのは当然で、それを何度もやらされれば自信喪失して、出来ることも出来なくなります。大きすぎるノルマを課す、成功の見込みが薄い仕事を与えるのは、大きな問題です。

 まぁ、口で言うのは簡単ですけどね(笑)。