A やはり、口コミや紹介が一番ですよね。彼らはネットの情報で人を信用することは絶対にありませんからね。

 私は新たな顧客を探すことはあまりありませんが、Bさんは新規のお客さんを獲得するときは、既存顧客からの紹介が多いですか?

B ほぼ紹介しかないですね。華やかな会合などから取引が始まるイメージを持つ人もいるかもしれませんが、そうしたケースは多くありません。

 紹介以外にも有効な方法があります。それは、お金持ちがお金持ちになる前から関係を築くことです。

 お金持ちがどのように生まれるかというと、1つはお金持ちからの相続、もう1つは事業を成功させて会社を上場、あるいは売却するかのどちらかです。そして、会社を上場させてお金持ちになった人が一番信用できないのが、上場した途端に近づいてくる人です。

 なので、大手金融機関のプライベート・バンキング部門は、超富裕層対応の一環として、ベンチャー企業へのサポートにも力を入れているのです。

A 以前、別の場所でご一緒したある有名俳優さんも同じことをおっしゃっていました。「自分が売れる前からの知り合いだった友達しか信用してない」と。全国区の知名度を獲得してから近づいてくる人間はダメで、目を見て話せば大体わかるとか…。

B 俳優さんにもそういう感覚があるんですね。

A ここまで、最初に接触するところで信頼できる人、信頼できない人という点で話してきましたけど、一度関係を築いた後に信頼を今度深めていく段階もあるかなと思うんです。普段のやり取りの中で、これだけは絶対やらないとか、むしろこれをやると意識してるポイントはありますか?

B 怒られたときに逃げないことですね。逃げるというのは、失態をごまかして反省の態度を示ないことを指します。

 富裕層をはじめとして、社会的に成功された方の多くは、よく怒ります。でも、怒る理由は心の底からむかついているわけではありません。「コイツはちゃんと反省して、行動を改められる人間かどうか」というのを見抜こうとしているのです。

 特に若いプライベートバンカーだと「お客さんが怒ってくれている」と解釈できるかどうかというところが、顧客と良好な関係を築けるかどうかの分水嶺となります。