今後の経済政策の柱の重要な1つは、意外に思われるようですが「地方創生」にあると思っています。地方創生の取り組みを、従来通りの地域活性化策としてのみ捉えるべきではありません。
地方の農業、漁業、林業、建設業、サービス業、製造業には相当のポテンシャルがあり、生産性向上の余地もある宝の山です。地方創生を担当していてわかったのは(編集部注/2014年9月、安倍政権は地方創生担当大臣を新設し、石破を任命した)、中小企業や地方にこそ高付加価値の商品やサービスを生み出す潜在力がある、ということでした。ここを起点として、ITやAIなどを利用したイノベーション、起業、移住などを進めていく。それはまた日本人の生き方の変革へとつながり、豊かで幸せな日本を創っていける、と思っています。
増税論者にレッテルを貼るだけでは
社会保障改革の議論は進まない
財政規律の話をすると、増税派だとか財務省の手先だとかレッテル貼りをされる風潮が一部ありますが、国家財政の持続性は社会保障制度の持続性に直結するわけですから、等閑(とうかん)視できるという考え方にこそ私は大いに疑問を抱きます。医療、介護、年金制度については、高齢者数がピークになる2042年が1つの節目となります。
この議論の際に必要なことが3つあります。1つ目はタブーを恐れない、作らない。2つ目は、高齢者も、子育て中の人も、あらゆる立場の人が議論に参加する。3つ目に会議はすべて公開にし、記録はすべて残し、不都合と思われるようなデータでもすべて開示する、ということです。
私は今一度、福田康夫内閣の時にやったような社会保障に関する国民会議(編集部注/2008年1月、福田内閣は社会保障国民会議を設置し、10カ月にわたって社会保障の機能強化のための改革案を各界の有識者に議論させた)を立ち上げ、半年から1年くらい広範に議論をしたうえで今後のプランを決めないと、国民世論の納得が得にくく、納得感のない計画だと必ず様々な立場からの不満が出て頓挫するのではないかと思っています。ただいつまでも議論していては間に合わないので、論点は事前に決めておいたほうがいい。ここでいくつか視点を提示してみたいと思います。