東海道新幹線・個室席の成功は
打倒ANA・JALの気概を持てるか
はたして東海道新幹線の個室席・半個室席は成功するのだろうか?筆者は、現状のままでは厳しいと考えている。
東海道新幹線は、東北や北陸新幹線よりもはるかに乗客が多いものの、それはビジネスパーソンの移動需要が支えている。ゆえに出張経費の範囲で高額な席は予約しにくい。
経費に縛られない経営層や著名人などのニーズが考えらえるが、これもマスコミやファンの出待ちなどの格好のターゲットとなりそうで、かえってプライバシーを阻害されるリスクもあるだろう。
ビジネスパーソン向けのサービスとしては、東海道新幹線には普通車指定席の一部に専用車両として「S Work」車両を設けている。利用者は、会議を行うための空間「ビジネスブース」も利用可能だ。

S Work車両の追加額は1200円(5月15日から2000円に値上げ)で、ビジネスブースの利用額は60分で1500円。たとえ値上げしても指定席に3500円の追加料金で、プライバシーを確保しながら会議を行うことが今でも可能だ。そのため、会議のためだけに半個室や個室席を購入するメリットは薄いと考えられる。
あるいは、「小さい子どもがいて、周りに迷惑をかけなくない」といったファミリー層の利用も考えられる。しかし、半個室・個室の座席は1人用で、半個室席を向かい合わせても2人分にしかならない。これでは、そうしたニーズに応えるのも難しい。
そのため残された選択肢は、座席の快適さや付随サービスなどを、JALの国内線ファーストクラスやANAのプレミアムクラス並みに強化し、PRすることしかない。例えば「のぞみ」停車駅での専用ラウンジなど、できることは少なからずあると思われる。
外国人観光客(インバウンド)向けであれば、海外のクレジットカードや航空会社のマイレージプログラムの上級会員へのPRなども必要だろう。
航空会社のファーストクラスやビジネスクラス並みのPRを行い、いつでも利用したいと思わせる施策。それこそが、東海道新幹線ならびにグランクラス含め、全ての鉄道の上級席の利用促進につながるのではないかと思う。