リーダー不在の時代のリーダー像とは

――具体的には、太郎氏のような強いリーダーシップを持つ人材を育てたいということですか。

杉村  若者が「将来は、自分が総理大臣や経済界の重鎮になって日本を背負って立つ!」と大志を抱いたのは、高度経済成長期のお話といわれるかもしれません。ですが、私たちが生きるこの混迷の時代にこそ、日本から世界の共存と繁栄に貢献するリーダーを輩出しなければならないと思います。

 バブルの崩壊で、世の中全体が希望を失いつつあった1990年代初頭から2000年ごろ、太郎さんは「多くの人の心を引き付ける、強いリーダーが必要だ」というメッセージを発信していました。たしかに、世の中に幸福な未来像を描くことが、当時求められたリーダーシップの一つの在り方でした。でも、今は個々の行動が社会を動かす時代になってきています。

 国をけん引する精鋭の育成も大切ですが、私たちはさまざまな業界でリーダーシップを発揮する人をたくさん育てていきたいと考えています。リーダーというのは、ポジションではなくアクションを起こせる人です。より良い社会をつくるには、志を持ったたくさんの人たちがあちらこちらでアクションを起こすことから始まると思っています。

――世の中の価値観は、とても多様化しています。就職活動の傾向や採用方法も変わってきています。

杉村 そうですね。我究館には中国や韓国からの留学生も増えてきていますし、学生の人気職種や採用におけるAIの導入など、就活界隈も大きく変化しています。就活は「悔いなく生きる」ための一歩であることを忘れず、かつ、時代が求める働き方を実現していくことも重要だと思います。

「こうあるべき」というひな型というか、強制力がなくなってきつつある一方、「個」がなければ決して「生きやすい」と思える時代ではありません。改めて自分らしさに向き合う必要があるのです。自分も周りの人も幸せにする、そのためにしっかりと我究(自己分析)し、自身で意思決定をしながら、悔いなき人生を生きていける人たちを育てていきたいと思います。

杉村貴子 我究館 代表取締役Photo by Kuniko Hirano
杉村貴子
すぎむら・たかこ/就職・転職を支援するキャリアデザインスクール「我究館」と、英語コーチングスクール「プレゼンス」を傘下に持つジャパンビジネスラボ代表取締役。我究館館長。1997年、青山学院大学経済学部を卒業後、日本航空にCAとして入社。98年、ジャパンビジネスラボ創業者の杉村太郎氏と結婚。2000年、夫の留学に伴い家族で渡米。帰国後は証券アナリスト(CMA)として、BS朝日のニュースキャスターを務める。07年、大和総研に入社。調査本部にてマーケットリサーチ、企画、新人採用・人材開発、広報に携わる。杉村太郎氏没後、14年から現職。著書に『絶対内定』(共著)、『たとえ明日終わったとしても「やり残したことはない」と思える人生にする』 ほか。
※我究館ホームページ https://www.gakyukan.net/