畜産動物を安く販売するための
苦痛を与える育て方に疑問
豆乳などの植物性食品の市場は、アメリカでは2020年の新型コロナウイルス感染症によるパンデミックがきっかけで代替肉を中心に売り上げが急増しました。
代替肉とは、おもに大豆を中心とした、植物由来のタンパク質が原材料の肉の代替になる食材です。大豆のほかにもエンドウマメ、ソラマメを使用した植物由来の代替肉を総称して「プラントベースミート」「オルタナティブミート」「フェイクミート」などと呼ばれる場合もあります。
2018年から21年の間に、米国における植物性の代替食品の総売り上げは48億ドルから74億ドルへと増加し、その成長の大部分を代替肉が担っていました。
植物性食品がアメリカで普及した理由としては、複数の食肉加工場が新型コロナウイルス感染の影響で閉鎖されたほか、人口増加による食料不足、畜産が引き起こす環境負荷に加え、近年対応が進む動物福祉への取り組みがあります。
従来の畜産では、食肉をなるべく安く販売するため、生産効率の最適化が求められ、野生では食べない穀物や成長率の高い餌を与えたり、狭い檻やケージで飼育したりなど、動物が苦痛に感じる育て方を採用する畜産業者が大半を占めていました。
しかし近年、「人が動物を利用するのは認めつつ、動物への苦痛は最小限にさせる」という動物福祉の考えが世界的に広まっており、畜産における生産効率の向上は、動物福祉に反すると批判が高まっています。
欧米諸国の代替肉ブームを受け、日本でも2021年に多くの食品メーカーが参入し、スーパーやコンビニ、大手ハンバーガーチェーンなどで代替肉の販売が始まっているものの、欧米と比較すると日本ではまだあまり広まっていないのが現状です。
「日本植物蛋白食品協会」によると、アメリカに比べると日本の肉消費量は約半分で、肉を過剰消費しているという考えを持ちにくいため、肉を控えて代替肉を選択しようと考える人が少数であるといえます。そもそも日本は代替肉の主な材料である大豆の消費量が多く、元々豆腐や納豆などを食事に取り入れているため、あえて本物の肉より味が劣り、価格の高い代替肉を食べて大豆を摂取する必要がないということもあります。
日本固有の社会背景や市場環境の中で、食品メーカー各社はずっと植物性食品の市場創造に苦しんでいました。
そんな中でなぜ豆乳は再び市場を広げる事ができたのでしょうか?