
「食欲がない子どもに無理やり食べさせる」「グズる子どもの機嫌を取るために甘いお菓子を与えすぎてしまう」……。子育てにおいて、親なら誰でもぶち当たるのが、“食”の問題だ。韓国でベストセラーとなった本の著者が解決法を提言する。本稿は、キム・ボギョン著、簗田順子訳『0~5歳 賢い脳のつくりかた スタンフォード大学博士でシリコンバレーで2児を育てたママの脳科学育児コンサルティング』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。
空腹以外に子供の食欲に
影響を及ぼす要因とは?
とても食欲のある日があれば、反対に何も食べたくない日もあります。甘いものが食べたいこともあれば、何を食べてもおいしくないこともあります。似たような日常を過ごしているはずなのに、お腹が空く速度も食べられる量も、毎日違います。
食欲に影響を及ぼす要因は空腹以外にもいろいろあります。
代表的な例が気分です。
激しい不安は往々にして食欲を失せさせます。不安はストレス状態への反応で、体はもしもの危険に備えて、逃げたりケンカしたりする準備をします。血圧や心拍数が上がり、筋肉は硬直して、睡眠や食欲は後回し。胸がムカムカしたり、つかえたりするような感覚は空腹や満腹を感じるのを邪魔するのです。
これは子どもも同じで、心配や不安、恐れは食欲減退につながります。特に子どもは不安で緊張すると、お腹が痛いと訴えますよね。
逆の場合もあります。お腹が空いていないのに気分的な理由で食事をする「感情的摂食」です。中でも注意が必要なのは、ネガティブな感情を解消するために食事をすることです。
感情的に食べさせる親が
感情的に食べる子をつくる
子どもたちによく見られる感情的摂食の原因は、退屈とストレスです。2020年に発表された論文によると、感情的摂食をする人は、ストレスを受けたときに食べたものをおいしいと感じ、脳の報酬系システムも激しく反応するそうです(注1)。
脳からドーパミンが分泌され、食事をストレスによるネガティブな感情を防ぐ手段にしているのです。
2014年のアメリカの研究によると、8~12歳の子どもの感情的摂食に影響を及ぼす最も大きな要因は、子どもの機嫌が悪いときに食べ物でなだめようとする親の行動だそうです(注2)。
感情的に食べさせる親が感情的に食べる子どもをつくるのです。
それに、子どもをなだめようとして食べさせるものは、アメやチョコレートのようなカロリーの高いものであることが多いでしょう。感情的摂食のパターンは、食べすぎや肥満などの二次的な問題を生みますが、これは脳と体が緊密にサインをやり取りしても、うまく食べるものを決められないことで起きるのです。