
アメリカのドナルド・トランプ氏の大統領復権で脱炭素が逆回転している。日本企業は脱・脱炭素時代にどう動くのか。長期連載『エネルギー動乱』内の特集「脱・脱炭素の試練」の本稿では、地球環境が専門であり社内外で要職を担う、JFEスチール専門主監の手塚宏之氏のインタビュー前編をお届けする。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
ワシントン訪問しエネルギー考察
「アメリカは空気が変わった」
――ロシア‐ウクライナ紛争、エネルギー安全保障、物価高、ドナルド・トランプ氏のアメリカ大統領返り咲きなど、ここ数年の間に脱炭素の流れに逆行するイベントがありました。世界の動きをどう見ておられますか。
2週間前にワシントンに行きました。(ダイヤモンド編集部注:取材は3月26日)。現地で産業界、経済界、シンクタンクの人などにトランプ2.0の話を聞きました。エネルギーの世界は大きく様変わりしています。
一つは金融です。
世界最大の資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンクCEO(最高経営責任者)は企業経営者に向けて自分の哲学についての手紙を定期的に出し、それがサステナブルファイナンス、ESG金融を引っ張ってきました。
ラリーが登壇したイベントから戻ってきたばかりの米商工会の人から聞いたのですが、今年ラリーが何を言ったかというと要するに「米国は空気が変わった」と。
ラリーの話を後から私もウェブサイトで視聴しましたけど、二つ大きな要因があったと。