倫理観が疑われる慰安婦問題を巡る発言
具体性を持たない感覚的議論の危うさ
このところ日本の対外関係に大きな影響を与え得る公人の発言や行動が目立っている。安倍総理周辺での歴史問題についての発言、橋下徹日本維新の会代表の慰安婦や在沖縄米軍についての発言、そして飯島勲内閣官房参与の北朝鮮訪問。少し性格は異なるが憲法96条の改正問題を巡る国内議論。
外国の批判はそれぞれの国益が相違することに起因するので、外国の批判があるが故にこれらの発言や行動が間違いであると論ずるべきではない。しかし「日本の対外関係」という視点で現実を見据えて冷静に考えてみると、やはり大きなリスクをはらんでいる。
まず、歴史問題や慰安婦問題に対する発言や行動は、舌足らずであったといったものではなく、それぞれの人々の信念や考え方に基づくものであるという捉え方がされており、さらにこのような傾向が時流であり、日本が「右傾化」していることの証左であるという見方が国際社会にあることを、考えねばならない。
橋下代表は当時どの国の軍でもこういう慰安婦制度を必要としたではないか、という趣旨を述べている。時代の推移とともに倫理観は変遷し、過去合法であったものが非合法になる。
昔他国もやっていたから、日本も批判されるのはおかしいと過去を正当化しようとすればするほど、女性の権利の尊重が大変重要である現在の倫理観も疑われることになる。
また、外国人を慰安婦として働かせるのに強制はなかったのではないかという点を論じるあまり、戦時においてこのような慰安所で女性の尊厳が害されたことをどう考えるか、という根本論が薄れてしまう。