匂い立つようなあんぱんに、ゴクり
嵩にも「たまるか」な展開
美しいきつね色に焼けたパンがずらりと並び、匂い立つよう。このあんぱんをまず、お仏壇に備えるのぶ。
羽多子(江口のりこ)はあんぱんを1個3銭に設定。10銭は高すぎる、2銭では安すぎる。いや、3銭でも儲けにならないとヤムおじさん(阿部サダヲ)は気に入らない。嵩の伯母・千代子(戸田菜穂)は安いと言うが、町の人は高いと敬遠する。
商売は簡単でないと釜次(吉田鋼太郎)はにやり。いやいや、売り上げは釜次にも関係するのだから、他人事で笑ってはいられないのに。こういうところが釜次のおもしろいところだ。
パン屋の開店にやってきた嵩から何か嬉しそうな感情が漏れ出ていて。そのわけをのぶが聞くと、母からハガキが来たと言う。「たまるかー」とのぶがはしゃぎ、思わず嵩も「たまるかー!」を使った。たぶん、嵩のはじめての「たまるか」。
はたして「たまるか」は今年のユーキャン新語・流行語大賞の候補になるだろうか。ちなみに昨年は『虎に翼』の「はて」がノミネートされ、ヤムおじさんを演じている阿部サダヲと成長後の蘭子を演じる河合優実が出演していた『不適切にもほどがある!』(TBS)を略した「ふてほど」が大賞に選ばれた。
「たまるか」なハガキの文面は、素っ気ないもので、のぶは「これだけかえ?」と口に出す。相変わらず、思ったことをぶしつけに口にしてしまう人である。そこがのぶのいいところでもあるだろうけれど……。
でも嵩は、母の感触を得られる筆跡がうれしい。きっと母の香りもするように感じられるにちがいない。さらに嵩が嬉しそうなのは、千尋(平山正剛)が自分たち家族の記憶を忘れていなかったからでもあった。