
同時通訳者として、ビル・ゲイツ、デビッド・ベッカム、ダライ・ラマ、オードリー・タンなど世界のトップリーダーと至近距離で仕事をしてきた田中慶子氏。「多様性とコミュニケーション」や「生きた英語」を主軸に、さまざまな業界のプロフェッショナルと対談していきます。今回は、初のエッセイ本『58歳、旅の湯かげん、いいかげん』(扶桑社)を上梓した、「旅好き漫画家」として知られるひうらさとる氏と対談。仕事や人生に向き合うスタンス、「才能」やAI時代におけるプロについて、さらに、快適な旅やワーケーションの秘訣、地方都市に移住する醍醐味など、プライベートでも親しい2人ならではの楽しい対談となった。(文/奥田由意、編集/ダイヤモンド社 編集委員 長谷川幸光、撮影/堀 哲平)
「好きで仕方がない人」よりも
「一緒にいるとラクな人」のほうが長続きする?

同時通訳者。Art of Communication代表、大原美術館理事。ダライ・ラマ、テイラー・スウィフト、ビル・ゲイツ、デビッド・ベッカム、U2のBONO、オードリー・タン台湾IT担当大臣などの通訳を経験。「英語の壁を乗り越えて世界で活躍する日本人を一人でも増やすこと」をミッションに掲げ、英語コーチングやエグゼクティブコーチングも行う。著書に『不登校の女子高生が日本トップクラスの同時通訳者になれた理由』(KADOKAWA)、『新しい英語力の教室 同時通訳者が教える本当に使える英語術』(インプレス)。Voicy「田中慶子の夢を叶える英語術」を定期的に配信中。
田中慶子氏(以下、田中) ひうら先生は18歳で漫画家デビューされてから、ずっと第一線で活躍されています。
私のような一般人から見ると、漫画家さんって、精神力も体力も駆使する、かなりハードなお仕事で、「命を削って仕事をする人」というイメージを持ってしまったりします。
でもひうら先生は、漫画家として大成しているだけでなく、旅や温泉など、プライベートも充実されている。仕事に人生を引っ張られてないところがすごいなと、いつも感心しています。
ひうらさとる(以下、ひうら) 「好きでたまらない」という仕事よりも、「これをやっていても苦ではない」「これならできそうだな」「得意だな」と思う仕事のほうが、意外と続くし、うまくいったりするんですよね。
田中 たしかに、恋愛も同じで、「好きで好きで仕方がない」という相手と一緒にいると、苦しくなることもありますよね。
ひうら 「この人とは一緒にいるとラクだわ」というほうが長続きしますよね。漫画も「この連載なら長期で続けていけそうだな」「この雑誌には私が描くポジションがある」という感覚です。
田中 それが「やりたいこと」と一致しているということですね。
ひうら そもそも、漫画を描くことをあまり「仕事」とは思っていないんです。
子どものころからずっと絵を描いていて、描くこと自体は好きなのですが、「何百万部ものヒットを出してやろう」というような大きな野望はないんですよ。デビュー時から、「家賃が払えるくらい稼げればいいな」くらいの心持ちで、淡々と続けてきました。
田中 それで、40年以上、第一線にい続けている。漫画を描くことがいやになったりすることはないのですか?