
胃腸薬「キャベジン」で知られる興和が、一般用医薬品の業界団体を相手取り訴訟を起こしている。
提訴されたのは業界団体「日本OTC医薬品協会」(会長=ロート製薬・杉本雅史社長)と関連組織や元会長など計4者。協会が編集・協力する『OTC医薬品事典』(発行=じほう)に興和の製品が掲載されていないとし、事典の頒布をやめて回収した上で、無形損害の賠償金1億円を支払うよう求めている。昨年9月に東京地裁に提訴し、今年に入り初弁論が開かれた。訴訟の背景には、8年前から続く興和と大正製薬の確執がある。
会長の座をめぐり内紛
訴訟を受けたのは、協会と関連組織で事典を編集する「日本OTC医薬品情報研究会」(代表理事=磯部総一郎氏)。また、該当する事典が発刊された22年5月頃に協会会長だった大正製薬の上原明相談役、研究会の代表理事で元厚生労働官僚の黒川達夫氏だ。
事典はOTC薬と指定医薬部外品の約2200品目を薬効別に収録。古くから薬局薬店で働く人なら一度は目にしたことがあろう事典で、88年に第1版を「大衆薬辞典」の名称で発刊して以降、研究会が2年ごとに編集してきた。興和の訴状によると、第17版までは自社製品が収載されていたが、それ以降は除外されたとしている。
除外されたのは、21年10月にOTC薬協が興和を「除名」とする懲戒処分を下したため。処分は度々理事会決議に反し、また理事会決議を否定する行動をとり、さらには協会の業務遂行に支障を生じさせたという理由で、要するに“内紛”と言える。事の発端は、OTC薬協の上部組織である「日本一般用医薬品連合会」(一般薬連)の会長の座をめぐる紛争にまで遡る。