「タイパ時代」に
好みが分かれる展開

 それを聞いてのぶは父(加瀬亮)が昔「のぶは足が速いき いつでも間に合う」と言ってくれたことを思い出し、勇気100倍になる。

 傍らで聞いていたくら(浅田美代子)は徒競走のように行くか……と懐疑的だった。これまでいつも羽多子が超現実的でツッコミ担当だったが、今回はくらがツッコんでいる。

 一方、嵩は、漫画への思いがあるが、千尋(中沢元紀)が医者にならないと言い出したため、嵩に病院を継ぐお鉢が回ってきたのだ。もっとも登美子(松嶋菜々子)が勝手に、嵩が継ぐと言い張っているだけなのだが。

 嵩は勉強が苦手。数学にいたっては「丁」の成績をもらってしまう。「丁」は落第レベルである。嵩は美術が唯一「甲」で、一箇所歴史に「甲」があった。

「普通どんなに成績が悪くても丙じゃないですかね」と千代子(戸田菜穂)を呆れさせたその経緯は、問題の意味がわからず答案用紙の裏に漫画を書いて丁にされたものだった。

 嵩ならできると登美子が環境を整えると言いだし、千代子は自分の環境の整え方が悪かったと嫌味を言われたと受け取ってカチンとなる。実母と伯母のピリピリ感にいたたまれない嵩。

 成績最低の嵩だが、ちょっとした勘違いで、のぶの勉強を教えることになる。「問題の意味もわからない」と言う嵩にのぶはあっけにとられるが、怒りも困りもしないで、ふたりで勉強を続けるが、数学の成績が「丙」と「丁」同士で何も発展しない。結局千尋に頼ることになる。

 ここまで見てきて、とくに大きな出来事が起こっていない。なにげない日常生活を描いている印象である。朝ドラとは本来ホームドラマなのでこのノリも間違いではない。ただ、タイパを求める昨今、これを好きな人と、はちきんおのぶの疾走のようにもっと速く進めてほしいと思う人がいるのではないだろうか。

 と思ったとき、先週18日、『あんぱん』の主題歌でもあるRADWIMPSの『賜物』がリリースされた。これでフルバージョンが聞けるとさっそくYouTubeで聞いてみた。すると、これが想像を超えた、劇的な構成になっている。しかも、PVが歌詞を読ませる作りなのだ。