
「いい意味ですごくシンプルで、内容がストレートにすっと心の中に入ってきます。放送時間15分の間に必ず1回涙が出るようなシーンが盛り込まれていて。僕も何度も台本を泣きながら読みました」
朝ドラこと連続テレビ小説『あんぱん』(NHK)について熱弁する吉田鋼太郎さん。『アンパンマン』の生みの親・やなせたかしとその妻・暢をモデルにしたドラマで、吉田さんが演じるのは主人公・朝田のぶ(今田美桜)の祖父である釜次。のぶの父・結太郎(加瀬亮)が病死してからは父代わりのように孫たちを慈しむ。だが明治生まれの頑固一徹な性分でなにかとかきまわす。この祖父役にどう取り組んでいるのか。また、現場の年長組として、若い俳優の多い現場でチームビルドをどう意識しているのだろうか。すると意外や、吉田はチームリーダーではないという。その真意は……?(聞き手・構成/ライター 木俣 冬)
演じている釜次役の印象は?
外からなにか言う「会長」
――朝田家の家族のシーンがたくさん出てきます。そのなかでは吉田さんはチームリーダー的な存在でしょうか。
(吉田鋼太郎さん)いや、リーダーは別にいます。言葉数は少ないけれど、言わないといけないことをきちんと言えて、それをみんながちゃんと聞く。そういう役割はのぶの母・羽多子さん役の江口のりこさんですね。
――吉田さんはどういう立ち位置ですか。
「会長」みたいな感じじゃないですか。実際には経営に参加していないけれど、外側からなにか言う。でもみんなはそれを聞いているようで、実は聞いていないみたいな(笑)。
――家長としての釜次をどう思いますか。
なにしろ明治の人なので、チームリーダー=説教する。チームリーダー=頑固。家長や父親は頑なでもいい、怒ってもいい。みんながそう思って受け入れていた時代ですよね。おそらく今の時代だったら、通用しないやり方かなと思います。
ただ、苦労人だからこそ出てくる言葉の説得力もあって。それが分かっているから、家族も彼の話を聞くのでしょう。つまり、話を聞くほうと聞かせるほうの信頼関係や愛情があれば、コミュニケーションは成立するのではないかと思います。