
ドナルド・トランプ米大統領は当初の関税攻勢を後退させ続けており、市場は喜んでいる。連邦準備制度理事会(FRB)議長を解任するつもりはないし、自身の関税で最も高率の対中関税を引き下げる可能性が高いとのトランプ氏の発言を受けて、23日に市場は再び上昇した。これはトランプ氏にとって「ミッテラン的な転機」なのだろうか。
一定の年齢の読者は、社会主義者のフランソワ・ミッテラン氏が、民間経済を政府が統制するという極左的政策をフランス大統領選の公約に掲げ、1981年に圧勝して政権の座に就いたことを思い出すだろう。このときの市場の反応は痛烈だった。ミッテラン氏は1年以内に社会主義をいったん封印し、1983年までにはそのほとんどを放棄した。彼は大統領を2期務めた。
このような歴史的な政策転換を思い起こすのは、トランプ氏が自ら打ち出した関税政策を段階的に後退させているからだ。トランプ氏はまず、メキシコとカナダを相互関税の対象から除外した。次に、中国以外のすべての国への相互関税を90日間停止した。その後、米税関当局はアップルやエヌビディアといった大手エレクトロニクス企業に例外措置を適用した。そして今度は、トランプ氏が中国に対する145%の関税率を大幅に引き下げるかもしれないという話だ。
ピーター・ナバロ大統領上級顧問とハワード・ラトニック商務長官が関税率の変更はないと宣言してから3週間で、かなりの変わりようだ。金融市場の厳しい反応や、リセッション(景気後退)や物価上昇への懸念がある中、さらに友好国か敵対国かを問わず世界各国から強い反発を受ける中で、こうした動きを後退ではないと考えるのは難しい。