通信事業者の電波を妨害し、通信を乗っ取り、フィッシングメールを送信
偽基地局は車載型で、ツーリングワゴン車の荷台に収まるサイズだ。通信不良を引き起こしたいエリアに出向いて、妨害電波を発信する。
この移動基地局は、日本の携帯電話事業者の信号を妨害し、近隣の4G/LTE対応携帯電話との通信を試みる。多くの5G携帯電話も初期通信はLTEを使用するため、事実上そのあたりにあるすべてのスマートフォンが影響を受ける。
通信が途絶すると、偽基地局は端末に2G(GSM方式)への通信方式のダウングレードを試みさせ、「中国移動(チャイナモバイル)」や「中国聯合(チャイナユニコム)」といった中国の携帯電話事業者を名乗るネットワークへの接続を促す。
接続が成立すると、弱い暗号化モードで通信が行われ、偽基地局は端末に中国語(簡体字)で「あなたの銀聯カードが使えなくなりました」といった内容のSMSを送信する。このSMSはフィッシング詐欺であり、記載されたURLにアクセスすると、数万円単位での被害が発生する可能性がある。

「偽基地局」犯罪のターゲットは「中国人スマホユーザー」
偽基地局の主なターゲットは、中国の携帯電話会社と契約しているスマートフォンユーザーであり、メッセージ内容も中国大陸から日本にやってきた人々を想定している。
日本人ユーザーのスマートフォンが通じなくなる現象はその余波によるものであり、大きなとばっちりを受けていると言えよう。
特にドコモユーザーは、妨害電波の周波数がドコモの利用帯に一致しているため、影響を受けやすい。他のキャリア(au、ソフトバンク、楽天モバイル、MVNO含む)も、通話不可やデータ通信不可になる可能性があり、安心とは言い切れない状況だ。
この種の中国人向け「偽基地局を使ったSMSフィッシング詐欺」は、日本以外の国でも発生しており、中国公安が注意喚起の動画を公開したり、タイでは偽基地局搭載自動車の持ち主と見られる中国人が検挙される事例もある。