腰だけでなく全身が痛くなり、頭がもうろうとしてきた。きつすぎる仕事のわりに、弁当はご飯と昆布のつくだ煮、ソーセージ一切れだけ。

 一緒の現場に入った男性に話を聞くと、以前に別の現場に住み込みで入ったとき、前借り分のほか、食費やふとん代などを次々に抜かれ、賃金は受け取れなかったという。

「働いても働いてもお金がたまらないのは、こうやって巻き上げるからなのか」

 後日の取材でわかったことだが、自分たちを雇った業者は、親会社との取り決めとは違う条件で働かせていた。本来は拾い集めた量による出来高払いだが、定額の安い支払いで済ませていた。

 夕方に作業が終わり、バスでカマに戻った。全身がズキズキ痛むが、新世界へ。酒を酌み交わしながらどんなルポに仕上げるかを練った。

 一休みして帰ろう。先輩と記者クラブのソファに横になり、気づけば朝。南国系の鳥の大きな鳴き声で目覚めた。

西成「日当1900円」「弁当はソーセージ一切れ」~ジャーナリストが見た日雇いの裏側ジャーナリストの大谷昭宏さん。釜ケ崎での取材経験は、原作した漫画『こちら大阪社会部』に多く登場する
市原研吾(いちはら・けんご)
記者になって四半世紀余り。朝日新聞社入社後、福井、和歌山、兵庫、大阪で主に事件を担当。投資詐欺や組織犯罪の取材に力を入れる。現在は大阪社会部の遊軍(何でも屋)。ダイナマイトを使った「ノミ行為」摘発の取材がきっかけで釜ケ崎かいわいに通うようになった。
矢島大輔(やじま・だいすけ)
2007年、朝日新聞社に入社。秋田、東京、沖縄、大阪で勤務。伝統的な祭りや習俗、経済事件、教育、災害、沖縄の基地問題などを取材。24年からは東京社会部で、防衛省・自衛隊を担当している。ディープな世界に関心があり、西成に通うことに。ほかに、市原記者との連載「探られた裏アカ~就活の深層」がある。
西成「日当1900円」「弁当はソーセージ一切れ」~ジャーナリストが見た日雇いの裏側『西成DEEPインサイド』
市原研吾 (著), 矢島大輔 (著)
定価1,650円
(朝日新聞出版)

AERA DIGITALより転載