今回の容疑者も報道を見る限り、独身で無職。もちろん、誰かと交際していたかどうかまではわからないが、数年前から精神を病んでいたというので、パートナーをつくる精神的余裕がなかった可能性は高い。
法務省が調べた
無差別殺傷犯52人の「非モテ度合い」
「いやいや、無職の非モテ男が無差別殺傷事件を起こすみたいなことを言っているけれど、そういう差別的な話をすることが、無職の非モテ男を追いつめることがわからないのか」というお叱りを受けるかもしれない。
もちろん、世の無職の非モテ男の大半は犯罪などと無縁に平和で暮らしていることは事実なので、そういうレッテル貼りをするつもりはない。しかし、一方で無差別殺傷事件の犯人を見ると、こういう人物像が多い傾向にあるのもまた事実なのだ。
少し古い研究だが、2013年に法務省法務総合研究所研究部が「無差別殺傷事犯に関する研究」というものを行った。これは無差別殺傷犯52人(男性51人、女性1人)を対象にさまざまな調査をしたものだ。
この52人の婚姻状況を見ると、43人(82.7%)が婚姻歴なしだった。婚姻歴のある9人に関しても8人は離婚と別居で、配偶者と同居していたのはわずか1人だけだった。
では、独身の51人は犯行時に交際相手がいたのかというと、明確に交際相手がいたのはわずか1人。45人は交際相手がおらず、「不詳」が5人だった。しかも、その51人の約4割にあたる18人は「異性との交際経験なし」である。「非モテ」であることは否定できない。
そして「無職」の傾向が目立つのも事実だ。52人の無差別殺傷犯の中で犯行時に職に就いていたのはわずか10人だ。37人は無職で、5人は就労経験さえない。
では、動機は何かというと最も多いのが「自己の境遇への不満」である。以下、非常にわかりやすいので引用させていただく。
《自己の置かれた境遇や現状に対する不満やいら立ち等を晴らすため、無差別殺傷事件に及ぶものであり、例えば、自己に発生した事柄について不満を抱いて、その気持ちを晴らすための憂さ晴らしとして他人に対する殺害を考えるもの、自己が正当に評価されていないことから社会に不満を抱き、社会の構成員を殺害しようと考えるものなどをいう》(法務総合研究所 研究部報告50 57ページ)
いかがだろうか。「全てが嫌になった」から、「苦労せずに生きている人」への憎悪を募らせ、無関係の小学生を轢き殺そうという考えに至った今回の容疑者の思考そのものではないか。