彼のような「インセル犯罪」の近年の傾向は「過激主義」(暴力など極端な手段で世界を変革させるという考え)に走っていることだ。これまではただ無差別に女性や子どもなど自分よりも弱い者を殺傷していたものが、「社会を変える」という大義名分を掲げるようになった。「女性嫌悪、過激主義として取り扱いへ 英内務省が戦略見直し(BBC 2024年8月19日)」といったように各国が「非モテ男によるテロ」を警戒している。
なぜここまで神経を尖らせてきたのかというと、既に日本の「非モテの独身男」が元首相を殺害するというテロをやってのけているからだ。
ここまで言えばお分かりだろう、山上徹也被告だ。
マスコミのミスリード報道のせいで、「自民党とカルト宗教の闇に一石を投じた悲劇のヒーロー」のように勘違いしている人も多いが、山上被告は「インセル」だ。本人がそのように自認している。
彼が投稿した全てのSNSを分析した、成蹊大学の伊藤昌亮教授はこう述べる。
このテーマに関わる語で「女」などの一般的な語に次いで出現度が高いのは、「インセル」(「非モテ」を表す英語圏のスラング)「呉座」「フェミニズム」「フェミニスト」などだ。これらの語を多用しながら彼は、いわゆる弱者男性論を展開し、フェミニズムを強く批判している(現代ビジネス 2022年8月12日)
実際、彼は世界中のインセルが感化された映画「ジョーカー」の大ファンで、ジョーカーに関して以下のような投稿も14回している。
《ジョーカーは何故ジョーカーに変貌したのか。何に絶望したのか。何を笑うのか》
無差別殺傷犯に多い「自己の境遇への不満」を体現したかのようなキャラクターに、思いっきり自分を投影して、「絶望する自分」に酔いしれてしまっているようにも見える。
ここまで自分をジョーカーに重ねていたのなら、なぜ元首相を殺そうと思ったのかもわかりやすい。旧統一教会どうこうではなく、自分を絶望させたこの狂った世の中を「暴力」でガラリと変えたかっただけではないか。