しかし、マスコミはそういう話を一切せず、山上被告を「悲劇の人」ともてはやした。「彼の境遇を考えれば気の毒」「やったことは悪いが、彼も被害者だ」とワケのわからない擁護をして、被害者である安倍元首相が悪いかのような報道もあふれた。

「強烈な自己愛と被害者意識」を持ち、社会を変えたかった山上被告の心はさぞ癒やされたはずだ。そして何よりも癒やされたのは、山上被告と同様の「インセル」だ。

「ああ、そっか。あそこまでやっちゃえば、この狂った世界は変えられるんだな」

 安倍元首相が殺害されてから、岸田文雄元首相、立花孝志氏と毎年のように「政治テロ」が起きているのは偶然ではない。犯人はいずれも山上被告と同じ「インセル」なのだ。

 残念ながら、日本はこれからどんどん「無職の非モテ男」が増えていく。低賃金・低成長が解決できないので、格差がどんどん拡大していくからだ。

「世の中でオレほど不幸な人間はいないからお前も死ね!」という身勝手かつ幼稚な理屈で、無関係の人の命を奪う「インセル犯罪」の対策に本格的に乗り出すべきではないか。

(ノンフィクションライター 窪田順生)

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