謎めいた屋村と
うさ子の内心

 ある日の授業中、教室に校長先生がやって来て、「朝田のぶ君はおりますか」と問う。のぶのやったことがとがめられるのかと思ったら――

 褒められた。

「君はまことに愛国のかがみだ」

 しかも、街で献金を集めている姿が新聞に載っていた。師範学校としても鼻高々のようで、みんなの前でのぶは大絶賛される。さらに、生徒全員を「誇りに思う」と称えた。

 それを見つめる黒井先生。できの悪い生徒だったはずののぶの変化に満足そう? 

 のぶはたちまち学校中で注目され、後輩がのぶに薙刀を教えてほしいと寄ってくる。

 それを見つめるうさ子の表情は微妙。のぶに負けるのがいやなのだろうか。

 うさ子はいい子のようで時々闇が見える。おそらく、忠君愛国の精神の大きさが、自分よりのぶのほうが大きいことに焦りや嫉妬を覚えているのではないだろうか。自分がまだまだ足りないと思ってしまっているのではないか。こんなふうに、人間の向上心や真面目さに忍び込み、愛国心の競走を煽るのだなあと、テレビから客観的に視聴している者としては思う。

 のぶのもとに嵩(北村匠海)から手紙が来た。また嵩子名義で。事務員が「またいつものかたからお手紙ですよ」というくらい覚えられているようで、しかも、事務の人が意味深に「フフフ」と笑うものだから、女性の名前で男性から手紙が来ていると気づかれているのかもしれない。

 その手紙には、屋村(阿部サダヲ)が銀座の美村屋に飾られている写真に写っていたという報告が綴られていた。嵩のことには興味がないが、屋村の情報は気にかかるらしいのぶ。

 休暇でのぶが御免与町に帰ると、釜次(吉田鋼太郎)がのぶの載った新聞の切り抜きを玄関に飾っていた。のぶはすっかり一家の誇りになっていた。

 蘭子も豪のために献金をする。

 ひとり、屋村だけはお国のために献金なんかしないと突っぱねる。そして、銀座の美村屋にいたのかと聞かれても知らないとごまかされてしまう。

 謎めいた屋村。

 謎めいたうさ子。

 と、そこへ、千尋(中沢元紀)が走ってくる。嵩から電話があって、のぶと話したいから10分後にもう一度電話してくると呼びにくる。