物理距離400m→メンタル距離600km。のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)のすれ違いがつらい【あんぱん第30回レビュー】

御免与町の近所暮らしから
東京と高知に分かれた2人

 のぶが慌てて柳井家に着くとちょうど電話が鳴った。ということは、浅田家と柳井家は往復10分の距離にあるということだろう。不動産屋さんで提示する基準だと徒歩5分は400メートルとされている。

 朝田家と柳井家はすぐ隣という近さではないが、それほど遠くないところにあるようだ。

 のぶが電話に出ると、カフェでみんなが例の謎歌を歌っていて騒々しく(今日はカフェのマスター役の陰山泰さんがギターを演奏していた)、健太郎(高橋文哉)が邪魔をしにくるものだから、のぶはすっと気持ちが冷めていく。

「嵩は東京へ何しにいったがね」

 のぶは愛国のかがみとして、戦地で働く兵隊さんを思って行動しているのに、嵩は銀座で遊んでいるように見えるのだ。

「ここには自由がある」という嵩。

 お国のために働いている兵隊さんには自由がない。その極端な差にのぶは苛立っていく。

 思わず「たっすいがーのどあほ!」と怒鳴って、電話を切ってしまった。

 千尋も千代子(戸田菜穂)ものぶが正しいと言う。この時代、自分のやりたいことよりもお国のためを優先していることが正しいとされていたのだろう。

 往復10分の距離に住んでいたのぶと嵩だったが、いまや物理的にも精神的にも距離が大きく離れてしまっていた。東京と高知の距離は600キロ以上ある。400メートルから600キロ、この距離の差は果てしない。

 物理距離400m→メンタル距離600km。のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)のすれ違いがつらい【あんぱん第30回レビュー】