売春島と飛田新地、ネットが与える影響
開沼 『飛田で生きる』(徳間書店)には、飛田を訪れる人は「店の名前なんて誰も覚えていない」と書かれています。いわば、飛田が持つ「街のブランド」に人が寄ってきているわけですね。その一方で、最近だとネット上に「あの店にはこんな子がいて、こんなサービスがある」と細かく書かれていたりもしています。そういった新しい「飛田消費の動き」について、どのくらい気にされていますか?
杉坂 スカウトの僕らはあまり気にしてません。ただ、店をやっていたときは載ってほしくなかったですね。良いことも、悪いことも載ってほしくない。良いことを書かれると、絶対に反対意見が書かれることもわかっているので、載らないことが一番ですよ。
社会学者、福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員。1984年、福島県いわき市生まれ。東京大学文学部卒。同大学院学際情報学府修士課程修了。現在、同博士課程在籍。専攻は社会学。学術誌のほか、「文藝春秋」「AERA」などの媒体にルポルタージュ・評論・書評などを執筆。読売新聞読書委員(2013年~)。
主な著書に、『漂白される社会』(ダイヤモンド社)、『フクシマの正義「日本の変わらなさ」との闘い』(幻冬舎)、『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』(青土社)など。
第65回毎日出版文化賞人文・社会部門、第32回エネルギーフォーラム賞特別賞。
開沼 売春島の取材をしたとき、客引きの女性から聞きました。「昔はワクワクして島で遊んでもらえたけど、いまはネット上でいろいろ細かいことを書かれてしまう。たいしたことないんだ、こんなもんなんだと盛り上がらない」と。そういう点について、飛田はいかがですか?
杉坂 売春島に行くまでは距離がありますし、観光気分で行くところにはそれもあると思いますけど、飛田に関してはあんまりないんじゃないですかね。飛田の場合は、飲みに行った帰りに遊んだり、「一発ヌいてから飲みに行こうか」という感覚で気軽に行けるので、そんなにネットの影響はないと思います。ただ、さっきも言ったように冷やかし客が増えたのは事実です。
開沼 すると、街全体のホームページを作る計画はあるにせよ、ネットの力を活かしていこうとまではいかないということですね。ただ、こうしてお話を聞いてくると、パブリック・イメージと飛田の実態との間には、だいぶ差があるようにも感じます。杉坂さんがおっしゃるように「飛田はちゃんと管理している」と広く伝えることで、社会からの信頼が増すことも考えられますね。
杉坂 本当はそれを知ってもらいたいんですけどね。これは読む側にとっては面白味がないんですけど、値段競争をしたらダメなんですよ。絶対に適正価格があるはずなんです。いまは特にヘルスが値段競争をしているので、高級店と激安店が二極化していますよね。
ましてや、安い店の女の子ほど“本番”率が高いんです。高級店ほど本番は少ない。飛田が本番してもいいとされているわけではないんですけど、ソープ・ちょんの間側とヘルスの側がきっちりと棲み分けをしてほしいです。それから風俗店の数も多すぎるんでしょうね。