信頼関係構築における真のコミュニケーション力

 しゃべりが苦手な人の場合、会う前から「どんな話をすれば場が和むだろうか」「うまく話せるだろうか」「つまらないヤツって思われないだろうか」「退屈させてしまうのでは」などと考えるだけで気が重くなり、雑談していても「場違いなことを話してないかな」「こんな話、面白くないのでは」「早く切り上げたいと思ってるんじゃないか」などといった思いが込み上げてきて、ますます気が重くなるものである。

 その問題の人物にも、そうした傾向がみられるようだ。

「彼もそんなことを言ってました。だから営業には向いてないっていうんです。でも、私は彼の勉強熱心さや頭の回転の速さはズバ抜けていると思うし、信頼を置いているんです。だから、じっくり付きあっていけば、営業先でもきっと信頼を得られると思うんです。でも、本人はきついって言うし……困っちゃいます」

――日頃から身近に接しておられる方がそう思われるのですから、きっと営業先でも信頼を得られると思いますよ。一般に、しゃべりがうまい人が営業に向くって思われがちですけど、じつはそうでもないんですよ。しゃべりがうまいと、調子の良い人と思われ、却って警戒されてしまうということがあります。このしゃべりのペースに乗せられて騙されるんじゃないかというように。

「たしかにそういうこともありそうですね。実際、私自身、話し上手で調子のいい人物は警戒しますね」

――そういう視点からすれば、その方のようにしゃべりが得意でなく、気の利いた雑談はできないけど、商品・サービスの知識は豊富で関連する情報にも通じていれば、疑問に思うことを質問すれば適切に説明してくれるし、仕事相手から信頼を得られる可能性は高いと思います。なにも楽しい話ができる友だちをつくろうっていうのではなく、仕事上のやりとりなわけだから、ノリのよいしゃべりはできなくても、まったく問題ないでしょう。こうしたことをその方に話してあげたらどうでしょう。

「なるほど。それで気が楽になるでしょうし、自信になりますね、きっと」