日本の天然ガスはどこから? 輸入急増の「超意外な国」とは?
「経済とは、土地と資源の奪い合いである」
ロシアによるウクライナ侵攻、台湾有事、そしてトランプ大統領再選。激動する世界情勢を生き抜くヒントは「地理」にあります。地理とは、地形や気候といった自然環境を学ぶだけの学問ではありません。農業や工業、貿易、流通、人口、宗教、言語にいたるまで、現代世界の「ありとあらゆる分野」を学ぶ学問なのです。
本連載は、「地理」というレンズを通して、世界の「今」と「未来」を解説するものです。経済ニュースや国際情勢の理解が深まり、現代社会を読み解く基礎教養も身につきます。著者は代々木ゼミナールの地理講師の宮路秀作氏。「東大地理」「共通テスト地理探究」など、代ゼミで開講されるすべての地理講座を担当する「代ゼミの地理の顔」。近刊『経済は地理から学べ!【全面改訂版】』の著者でもある。

日本の天然ガスはどこから? 輸入急増の「超意外な国」とは?Photo: Adobe Stock

日本のエネルギー問題を考える

「いかに軍備を整えようとも、食料とエネルギーが途絶えれば国家は一瞬で瓦解する」

 国家にとっての安全保障を考えるうえで、最も重要なのは食料とエネルギーではないでしょうか。日本はこれらの多くを輸入に依存しています。輸入先との関係性だけでなく、世界情勢の変化を受け、資源の輸送ルートの安全確保が日本経済にとって重要な課題となっています。その日本が、各種資源をどこから輸入しているのかご存じでしょうか?

天然ガス:パプアニューギニアに注目!

 天然ガスは、原油と同じく褶曲構造を持つ地層に多く埋蔵されています。そのため、原油の産油国と同じ顔ぶれの国で産出量が多いのです。天然ガスの産出量は、アメリカ合衆国、ロシア、イラン、中国、カナダ、カタール、ノルウェー、サウジアラビア、アルジェリアが世界の上位10カ国です。

 日本では天然ガスを輸入する際、液化天然ガス(LNG)として輸入します。気体の天然ガスと比べて、LNGは体積がおよそ600分の1にまで減るため、一度に大量に運べるという利点があり、輸送コストの軽減が図れます。

 日本のLNG船での輸入相手先は、オーストラリア、マレーシア、ロシア、アメリカ合衆国、パプアニューギニア、インドネシア、カタールです。興味深いのはパプアニューギニアです。

 2014年、パプアニューギニアではエクソンモービルのLNGプロジェクトによって採掘が始まり、日本に向けての輸出が拡大しています。オーストラリア、マレーシア、パプアニューギニア、インドネシア、カタール、これらの国とわが国を結ぶシーレーンは東南アジアやミクロネシア地域を通過します。

(本原稿は『経済は地理から学べ!【全面改訂版】』を一部抜粋・編集したものです)