気遣い不要の会話に慣れてしまう危険
“AI英会話症候群”の前例が、社会問題化
繰り返しになるがAI英会話のメリットに、不完全な英語でも恥ずかしい思いをせずに練習できることが挙げられる。本来は対面スクールだって恥ずかしく感じる必要は全くないのだが、なにしろ日本人はシャイなので、自信を付けるためにAI英会話が役立つのなら大いに利用すればいいと思う。
しかし、このメリットの裏を返せば、「AIには気遣いが不要」というデメリットがある。
人と人が会話する時には、程度の差こそあれ気遣い、つまり相手への配慮や、相手を理解しようとする努力が伴っているものだ。とりわけ日本でのそれは独特だが、気遣いが大切なのは万国共通である。
ところがAIとばかり会話していると、この気遣いの筋肉が衰えてくる。
AIは、イヤミなリアクションをしたり、あなたの話をさえぎって口論したりしない。何かの拍子であなたの言葉を不快に思って怒りだすことも決してない。
だからこそ、あなたの気遣いが欠けていても、それに気づく機会もない。
あなたが何を言っても受け入れてくれる――。これはAIによる、いわば偽りの心理的安全と言える。AI英会話だけで英語が上達した気でいると、この偽りに包まれた感覚が、普通になってしまう危険性がある。

すでにアメリカでは、「AIガールフレンド」が社会問題化している。気遣い不要で、あるがままの自分を常に受け入れてくれ、不機嫌な日もない。人間の恋人では実現できない「常にパーフェクトな恋愛相手」として、AI彼女にハマる若い男性が急増している。彼らはAIを優先し、現実の人間関係を犠牲にしてしまうそうだ。
AI英会話に慣れすぎると、生身の人間との英会話は苦手だが、AI相手ならいくらでも楽しく話せる――。そんな“AI英会話症候群”が発生するのではないだろうか。
では、AI英会話を正しく役立てるためには、どのような点に注意したらよいのだろう?