ただ、第三者委員会側からしてみれば、当事者や関係者へのヒアリングや証拠については公表内容以上は公開しない前提で集めているであろう。ヒアリング範囲は広く、その全員から開示の了解が取れるとは思えない。中居氏側の代理人も、いきなりの開示は難しいとわかった上で求めているようにも感じる。

「第二」では、調査報告書の「欠陥」が指摘され、その釈明が要求されている。これによれば、「中居氏側は、当初守秘義務解除を提案していました」とある。これは第三者報告書が、被害女性側が守秘義務解除に応じたものの中居氏は応じなかった、とする点と相違する。

 さらに「守秘義務にこだわらずに約6時間にわたり誠実に回答した中居氏の発言がほとんど反映されていません。かつ、その反映しない根拠も理由も示されていないのです」とある。これらの点については第三者委員会側からの再反論がない限り、部外者が判断することは難しい。

「性暴力」の定義は?
レイプとは違うのか

 ネット上で疑問が見られたのはこれに続く「性暴力」の定義に関してである。ここでは、「『性暴力』とは普通の日本人にとっては肉体的強制力を行使した性行為として、凶暴な犯罪をイメージさせる言葉です」「ところが、貴委員会は(略)WHOの広義な定義を何ら配慮しないまま漫然と使用しました」などとある。

 要約すれば、「性暴力」という言葉から「普通の人」が連想するような激しい被害は与えていない、ということなのだろう。

 この点については「WHOの定義は広すぎる」と同意する意見もあるものの、現在の刑法が「不同意性交等罪」と同意に基づいた基準となっていることもあり、「この時世でこれ言えちゃうのヤバ」「合意のない性行為も「性暴力」と考えていないのならやぶへびなんでは……」といった反応が散見される。

 ただ、「性暴力」ではないが「レイプ」という表現で名誉毀損が認められた訴訟がある。今年1月の東京地裁判決だ。フォトジャーナリストの広河隆一さんが文藝春秋に550万円の損害賠償などを求めた裁判で、同社に55万円の支払い命じる判決が言い渡された。

 この裁判では、2023年当時に報道された記事の見出しなどにあった「レイプ」という表現が「強制性交等罪」(当時)に該当する行為を示すものであり、そのような行為はないと広河氏が主張。記事全体を読めば「強制性交等罪」にあたる行為ではないとわかるものの、見出しには問題があると認められる結果となった(文藝春秋側は控訴)。

 「性暴力」と「レイプ」では、また印象が異なるが、中居氏側の代理人弁護士らは性暴力に関する言葉の認識に個人差がある状況を突く狙いがあるように見える。