銀行が紹介してくれた人材
人が良く、期待されていたが…

 ある程度会社が大きくなった段階で、管理部門や企画部門の人を外部から採用することはよくあります。人材に心当たりがない経営者は、取引銀行に人材の派遣を頼むことが多いのですが、ここに注意点があります。

 実際にあった話ですが、ある中小企業が銀行に頼んで支店長経験者を採用したことがありました。その人は経歴を笠に着て横柄な態度を取ることもなく、とても人当たりが良かったのですが、結果的には大はずれでした。

 社長から指示されたことはある程度するのですが、積極的に自分から仕事を見つけることをしなかったのです。

 中小企業、それも伸び盛りの企業の場合では、管理部門自体の体制を作り上げなければなりません。しかし、出来上がった仕組みの中でしか仕事をしてこなかった人の中には、創造性や実行力が足りない人も少なくないのです。

 結局、社長も人が良く、その人を途中で辞めさせることはできず、その会社の定年まで在籍しました。

 しかし、本当は銀行に「この人はうちでは合わないので、違う人をください」と頼んで交代させるべきでした。銀行が自行の人材を送ってくれるのは、その会社を評価しているということですから、頼めば別の人材を送ってくれるはずです。

 ただし、銀行が中小企業を甘く見ている場合には、行内で役に立たなかった人を送ってくることもあるので、その見極めはした方がいいでしょう。銀行も中堅以上の人のポストがなく、とにかくどこでもいいので「押し込みたい」といった意向があります。そうしたときに甘く見られると、「適当な人材」を送り込まれるのです。

 銀行が自社をどう見ているのかは、日頃の付き合いの中で分かると思いますが、相手の好意につけ込むことがある点には注意が必要です。

 これは管理部門に限らず、採用全般に言えることですが、候補者とは何度も会って話をすることが大事です。仕事の姿勢を聞いたり、飲みに行って人柄を観察したりするのもいいでしょう。

 部長だった、支店長だったといっても、単に出世のレールに乗っていただけかもしれません。肩書きは全く当てにならないのです。

 採用して、それでもどうしてもうまくいかない場合には、銀行からの派遣なら遠慮なく交代を申し入れることも大切です。