柳井氏の「カミナリ」の弊害とは?

 特に業績に強く影響する文化が、2つ確認された。「競争文化」と「革新文化」である。競争文化とは、成果主義や数値目標の達成を最重視する価値観であり、革新文化とは、新しい挑戦や変化への対応を重んじる風土である。

 これらの文化を持つ企業は、他の文化タイプよりも明確に業績が高い。たとえば、競争文化は業績に対して0.34、革新文化は0.32の正の影響を与えると分析されている 。

 一方で、規則や秩序などを重視する「官僚文化」や連帯感や結束などを重視する「共同体文化」は業績への直接的な効果がほとんど確認されなかった。秩序や仲間意識を重視する文化は、安定はもたらすが、業績の押し上げにはつながりにくい。

 つまり、業績を上げるために重要なのは、リーダーが部下の意見を聞き、業績を押し上げる文化を作ることだ。怒鳴るでも命令するでもなく、協力的な態度を取るリーダーが、組織を成長させる。

 反対に「道具的リーダーシップ」と呼ばれる型は、業績に対して負の影響を与える傾向がある。手順やルールを重視し、明確な基準を部下に押しつけることで管理しようとする。業務は整うが、柔軟性や創造性は損なわれる。

 研究では「道具的リーダーシップは、内向きで硬直的な官僚文化を助長する。官僚文化は業績との関連が弱く、むしろ変化への対応力を妨げる」と述べられている。

 つまり、厳格な管理によって企業の動きは鈍くなり、結果として成長の余地を奪うということだ。前述の本で紹介されているエピソードを振り返ると、澤田氏が必死で頑張ってきたプロセスをすっ飛ばして、業績に対してただカミナリを落とすというのは、「道具的リーダーシップ」だ。

 柳井氏のような「成果第一主義」は、確かに合理性がある。だが、それを実現するための手段を誤れば、逆効果にもなる。成果を出すためには、社員が自由に考え、挑戦できる環境が必要である。そのためには、信頼と協力を土台とした文化が不可欠なのだ。

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