
江藤拓農相は5月21日、石破茂首相に辞表を提出した。コメ騒動の最中、「コメは買ったことがない」などと講演会で発言したことが批判を招いた。江藤氏が在任中、農水官僚らに威圧的な態度で接していたため、自由闊達な政策論議が封殺されていたとの指摘もある。ピンチヒッターとして急きょ、農相に就任することになった小泉進次郎・自民党水産総合調査会長は、農水省の政策立案能力を復活させ、農政の大改革を実現できるのか。特集『公務員の危機』の#7では、公務員アンケートの結果に基づき江藤氏のパワハラを暴くとともに、小泉氏に託された農政大転換の詳細を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)
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「幹部全員ビズリーチに行け」との迷言残し江藤氏は退任
小泉新農相に課された重大使命とは?
農水省が、大臣として迎える政治家の人材欠乏に苦しんでいる。石破内閣で最初に農相に起用された自民党の小里泰弘氏は、就任直後の総選挙で落選しあえなく退任。急きょリリーフとして農相となった江藤拓氏は今年5月18日の講演会で「コメは買ったことがない。支援者の方々がたくさんコメを下さるので、まさに売るほどある」と発言し、米価高騰に苦しむ国民のひんしゅくを買い更迭された。いずれも親子ともども農林族の2世政治家だ。これでは「世襲議員の限界」と批判されても仕方がない。
実は、農水官僚たちの苦悩はそれだけではない。江藤氏は安倍内閣で農相を務めていた頃からパワハラが指摘されていた。農相として江藤氏がカムバックする際には、「また暗黒時代が戻ってくる」という声が省内で上がっていたほどだった。
実際、江藤氏による官僚への当たりはきつかった。特集『儲かる農業2025 日本の夜明け』の#5『農水省の「次期次官レース」過熱!調整型エリートvs突破型リーダーの勝負の行方…令和のコメ騒動の責任を取らされるのは?』で詳報した通り、江藤氏が局長以上の幹部らを前に、「おまえら全員ビズリーチ(転職サービス)に行ってこい」と言い放ったこともあった。
江藤氏は最近、備蓄米を放出しても米価が下がらないなど失態続きで、従来のパワハラに不機嫌が加わっていた。省内はピリピリしたムードが支配していたという。
ダイヤモンド編集部は5月27日まで、公務員を対象にしたアンケートを実施しており、5月21日現在で380人超の回答を得ている。それらの回答からも、江藤氏に気を使って農水官僚らが神経をすり減らしていることが浮き彫りになっている。
次ページでは、省関係者へのアンケートで明らかになったパワハラの実態を暴くとともに、新たに農相に就任する小泉進次郎氏に課された使命に迫る。