
英国の労働党と友党関係にあるのは従来、米国民主党だった。ところが、英スターマー労働党政権は、意外にも、米トランプ共和党政権との間に友好的な関係を構築している。トランプ関税を巡る交渉で、英国だけいち早く合意できた理由の一つに、トランプ政権発足前から両首脳の最側近同士による議論が始められていたことがあるとみられる。特集『公務員の危機』の#21では、国内外の行政組織、官僚制に精通している吉牟田剛・大阪大学招聘教授に、英国の公務員制度がいかにアップデートされてきたかや、改善が必要とされる課題を解説してもらった。
AIによる効率化へ、職員40万人以上が研修を受ける大改革

わが国や、英国、ドイツ、フランスの国の組織は、基本的に、幹部候補を採用試験で選抜し、内部で時間をかけて育成するキャリア・システムを採っている。行政の継続性、公平性、政治的中立性の必要性から、公務組織においてキャリア・システムはおおむね維持されていくと考えられる。
しかし、閉鎖的ともいえるキャリア・システムでは、時代の変化に対応した人材ポートフォリオが構築できない、優秀な若者を引き付けることができなくなっているなどの問題が指摘されている。このため、キャリア・システムが空洞化しないための努力が必要となっている。
では海外の公務員制度改革はどうなっているのだろうか。今回は、英国の状況について説明する。
次ページでは、英国の幹部公務員が外部人材に開かれていった経緯や、合格率2%のファスト・ストリーム(速い昇進)制度を含む幹部人材の選抜方法、待遇、役割などについて徹底解説してもらった。第2期トランプ政権誕生時に、英国政府がスピーディーに対応できた秘訣とは何なのか。