「終わらない戦争はない」
次郎の意味するところは?
次郎は「終わらない戦争はない」と再び言った。終わったら、世の中がすっかり変わるかもしれない。そのとき何をするのか考えようと語るのだ。
いまがつらいから未来を夢見るという、つらいことのやり過ごし方があるが、この場合は少し違うだろう。
未来に想いを馳せることで自分が大事にしていることに気付こうという考えかたである。いま、のぶは、状況に流されている。お国のためにと思っているのは、戦時下、こうあるべきと社会に思いこまされているだけだ。次郎はのぶの本当の心を目覚めさせようとしている。
次郎は、戦争が終わったら写真を撮りたいと語る。
すっかり次郎の株がバク上がりである。だが、次郎が言っていることは嵩が言っていたこととさほど違いはないのだ。
きれいなものをきれいと言えない世の中を批判し、自由に生きることを求める嵩にはのぶは猛反発したが、次郎の言葉は素直に聞いている理由は、人間力の違いであろうか。次郎の話し方は穏やかだし、社会人としての実績もあるので、説得力がある。
なによりしゅっとしている。「あさイチ」にゲスト出演した時、作家・国木田独歩(雑誌「婦人画報」の創刊者であり著書に「武蔵野」や「牛肉と馬鈴薯」などがある)の玄孫であると語りネットニュースに取り上げられていた。家柄の良さみたいなものがにじみ出ているのかもしれない。嵩を演じる北村匠海も嵩を頼りなく演じるのが巧いのだけれど、当人はクレバーで感じのいい俳優であるのだが。
のぶは帰りがけ、思い直して次郎のもとに走る。足が早いから間に合って、次郎に追いついた。
やりたいことを見つけたら思い切り走れば、のぶは足が早いから間に合うと、結太郎が言っていたように。のぶは次郎と結婚する可能性を見つけて、走って見事にゲットしたのである。
「こんな私でよかったら、ふつつかものですけんどよろしゅうお願いいたします」
この時、嵩のことを一切思っていないのが、清々しいほど悲しい。
こうしてのぶと次郎の婚約が決まり、朝田家の面々は大喜び。
ただひとり、屋村(阿部サダヲ)だけは「あいつ死なないといいけどなあ」と嵩を心配する。
この時、屋村は上空に向かってセリフを言っていて、語り(林田理沙)に語りかけている体(てい)だった。語りが「だいじょうぶ」とやさしく言う。ゆくゆくは、のぶと嵩は結婚することが決まっているからだいじょうぶなのだ。でも次郎がとってもいい人すぎて、このひとはこの先、どうなるのかと心配になる。
