第2の“名言メーカー”として覚醒した
若松次郎(中島歩)のモデルは実在するのか?
実在した暢はやなせと知り合うまでのことはほとんど記録に残っていないので、オリジナルストーリーになっている。ただし、やなせと結婚する前に、別の人と結婚していたことは史実である。
若松次郎(中島歩)は暢の初婚の相手を少しモデルにしているのだろう。
でもだいぶ自由にキャラを作っていると思う。
次郎は寛(竹野内豊)に継ぐ名言メーカーになってきた。気のせいか、低めの声とゆっくりめの話し方も似ている。
ある日、のぶのもとに次郎から手紙がくる。船で海外に行っていたが帰ってきたので、会いたいというお誘いだった。
次郎はのぶの気持ちが変わるまで待つ気だが、のぶは、縁談をお断りした気持ちは変わらない。もう一度お断りすべく会う。
赤い絨毯が敷かれた、庭の広いすてきなお店で会うふたり。赤が反射して店内全体をほんのり紅く染めている。椿の花もきれい。撮影に気合が入っているのを感じる。
そこで、次郎に正直な人で好ましい(大意)と言われたのぶは、これまで言えずにいた正直な気持ちを吐露する。
のぶは迷っていた。
「愛国のかがみ」として生きてきて、蘭子(河合優実)のことを思うと、揺らいでしまうと。子どもたちに愛国を説くのがつらくなっていた。
ここでやっと、ここまで今田美桜が行っていたゆらぎの演技とのぶの心情が重なり合う。
すべてにおいて中途半端な自分が「次郎さんを幸せにする自信がない」と言うのぶだが、幸せにしてもらうのではなく幸せにすると主体性のある言葉を使用している点は良いといえるだろう。
そして次郎は名言を製造しはじめる。
「そんなに重い荷物をいくつも担いでいたら、船だったら沈んでしまいます。荷物を下ろす用意をしませんか」「そのときが来たら思い切り走れるように」
「ゆっくり考えればえいです。のぶさんは足が早いきすぐ追いつきます」
寛はやなせたかしの名言を先取りしているのだが、次郎はたぶん、中園ミホのオリジナル。
走るのが好きなのぶ。亡くなった結太郎(加瀬亮)の言っていたことと似て、のぶが得意な走ることに掛けた言葉にのぶの気持ちは動く。
